1982. Australian. 27X40inch. Folded. Linen-backed.

■Go!Go!珍品

 『ブレードランナー』の海外版ポスターには、2タイプのコラージュによるヨーロッパ版とジョン・アルヴィンによるUS版があるが、このオーストラリア版1シートはそのどれでもない珍しいデザイン。アルヴィン・アートに呆れるほど強引な合成を行っている。フォードの顔はドイツ版(つまり日本版)と同じ写真を反転させて貼り付けたものであろう。印刷も4色刷りだろうか、これではまるで安っぽいドライヴ・イン映画のようだ。
 しかしこのポスターは全『ブレードランナー』ポスター中最も異彩を放っている。作品のキー・パースンとして、それどころかSF映画史に残るミューズとなったレイチェルが、ここでは髪を下ろした姿ではめ込まれているからだ。このショーン・ヤングがなんとも美しい。しかもその下にはH・フォードの走る姿が取って付けたように配置されている。右上のキャッチ・コピーは「『エイリアン』の監督と『レイダース』のスターがあなたを2019年のロスへ招待する!」ってな感じか。
 
 オーストラリア版が何故ここまで独自のデザインにこだわったのか全くの謎だが、数ある『ブレードランナー』のポスター中、最も珍品の匂いを放っているのは確かだ。
 後にDVDのアーカイヴ映像でも紹介されたポーランド版ポスター(ビキニの女性を描いたイラスト)は一瞬珍品として目を引くが、あれは劇場公開用として作られたポスターではなく、後年若手アーティストが『ブレードランナー』へのトリビュートとして制作したものである。紹介すべきポスターはいくらでもあるのに、あんなものがなぜアーカイヴで紹介されたのか全く理解出来ない。


1982. Australian Photo Sheet. 27X40inch. Folded.

■ポスター?ロビーカード?

 映画の宣材で、ポスターの次にポピュラーな物と言えば「ロビーカード」である。製作中に撮影された「スティル(スチル)」または撮影済みフィルムから起こされた素材を使って作品の印象的な場面を切り取り、タイトルやクレジットを付した宣伝物のこと。映画館のロビーに貼り出されることからこう呼ばれる。
 日本には古くから、映画の感動をその場面写真などから反芻出来るパンフレット(プログラム)という便利な物が存在するので、ロビーカードに対するありがたみはそれほどではないが、パンフレットを作って売る習慣の無い欧米ではこの種の記念品は珍重され、ヴィンテージ物ともなると相当な高値で取り引きされるのが当たり前である。

 『ブレードランナー』のロビーカードも大変人気があり、アメリカ・イギリス・スペイン・フランス・イタリア・ドイツ各国で制作されたロビーカードが、それぞれ5枚組みや8枚組みといったセットになってショップやebayで売られている(中には贋物もあるのかも知れない)。
 折り目に沿って切り離せば6枚のロビーカードと1枚のタイトルカードになる。しかしこのままだったらポスターとも言える。このようなスタイルの宣材はオーストラリアだけであろう。それぞれの場面写真の左側にあるのは、上記オーストラリア版ポスターのコピーと図柄。2色刷りが安っぽくもまたイイ味だ。
 ちなみに左下のスティル(ハリソン・フォードが自動車の屋根に立ってるやつ)が小生にとっては最も『ブレードランナー』らしい写真。この写真がこれだけの大きさ(18X22cm)で見られるというだけでもこのポスターは買い。ただし画鋲跡やら破れやらコンディションはすこぶる悪し。