■日本の「お家芸」
かつて日本の映画ポスターには独特のコラージュ感覚が炸裂していた(特に70年代は百花繚乱だった)。その作品の見せ場や役者たちの姿を、時に水増しなどしつつダイナミックな構図の上に展開する素晴しい技術。これを作画で見せる方法は他国にもある。しかしあくまでも写真を使う日本のやり方は、欧米人には何とも魅力であったに違いない。
日本発のデザインがドイツ、スペインなどでも採用された『ブレードランナー』のポスター。銃を握る大きな手がなんとも不自然極まりない。H・フォードの顔の下に貼り付けられてるのはUS版にも大きくフィーチャーされているユニークな形状の警察ビル。劇中初盤、その屋上ポートへとスピナーが螺旋降下して行くのを俯瞰で捉えたショットは何度見ても溜息が出る美しい場面である(この屋上部分は『未知との遭遇 特別篇』のラストで登場するマザーシップ内部の天井を流用したものらしい)。
他にもこのドイツ版にはロイ・バティやレイチェル(ショーン・ヤング)の姿ばかりか、クライマックス場面までが所狭しと貼り付けられている。最上部のスピナーも全く別のシーンから持って来たものだ(降りしきる雨が一緒に写っちゃってる)。
これら雑多でダイナミックなレイアウトが魅力的なこのポスターであるが、1番のポイントは何と言っても堂々としたタイトル文字『DER
BLADE RUNNER』だろう。3段組みの文字配列がなんとも美しい。タイトルに使われているアルファベットは「A」「B」「D」「E」「L」「N」「R」「U」の8文字だが、この8つの文字とこのロゴタイプの相性は完璧である。「C」や「G」や「O」などが入っていたらぶち壊しだったろう。
それにしても、どのポスターもハリソン・フォードの名前がタイトルと同じ大きさで掲げられているが、もしかしてそのような契約でも交わされたのだろうか。タイトル文字のカッコよさに比べるとなんとなく間が抜けているようにも思えるし。
珍しくロールで手に入った1枚。ドイツでも80年代くらいまでは、ポスターは折られた状態で工場出荷されるのが通常であったのだが、極たまにこのような出物に遭遇する。同じデザインのリバイバル版の方は、精度も甘く、クレジット最下部のサントラ盤インフォメーションが削除されている。
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