1982. Italian 6 sheet. 120X57inch (3X1.4 m). Folded.

■パノラマ

 ポスター収集のきっかけとなったのは、1988年にロンドンで見つけたイタリア版リプリントだったが、あれから20年を経た2008年5月、このポスターを入手することになり、何か因縁めいたものを感じずにはいられなかった。これもまたイタリア版だったからだ。
 本格的にオリジナル・ポスターの収集を始めて15年ほどになるが、その間様々なスタイルの『ブレードランナー』のポスターを目にし、コレクションに加えて来た。そしてこのポスターをネット上に発見した途端、「ああ、こいつに出会うために、僕はコレクターになったのかも知れないな」と、大袈裟だがそう思ってしまった。

 通常のイタリア版ポスターを3枚横につなげた大きさ。縦よりも横のダイナミズムを重視していた僕としては、UK版のレイアウトがベストだと信じていた。まさかこのようなスタイルのポスターが存在することなど知りもしなかったからだ。
 おなじみハリソン・フォード、ショーン・ヤング、ルトガー・ハウアーの3ショットは、ここでは配置の仕方が大きく異なり、他のポスターでは添え物感の強いヤング&ハウアーが、映画本編どおりの存在感を紙の上でも勝ち取っているのが嬉しい。
 そして縦の長さの2倍以上という横幅を生かして、2019年のロザンゼルスの夜景を目いっぱいに見せてくれる。よくよく見れば、人物3ショットの背後に隠れている夜景を、タイレル社の上に放射された光線の色味を変えて右半分に持って来た、つまりは水増ししただけの夜景なのだが、全く問題ない仕上がりになっている。ロサンゼルスの冥界風景、3人の俳優、タイトル、コピー、クレジットという5つの要素を、これほどまでにバランス良く収めたポスターは他に無い。

 イタリア語のキャッチコピーを無理矢理なんとか訳してみると、

 “2019年、人類は自身の模造品を造った。偉大なる発明ほど大きな脅威となる。警察は「ブレードランナー」と呼ばれる特殊部隊を使うことになった。”

 といった感じか。

 UK4シートを凌ぐ大きさでハリソン・フォードたちが拝めるこのイタリアン6シート。劇場ではなく、主にストリート用看板として使用されたという。これが貼り出されたローマやミラノの街を見てみたかった。さぞかし壮観だったことだろう。

 以前ネット上で、縦3.2m、横4.2mという巨大なフランス版ビルボード用ポスターを見たことがある。デザインはUK横型とほぼ同じ。8枚全部を並べて上から撮影するにしろ、分割撮影したものを貼り合わせるにしろ、掲載する方も一苦労だったはずだ。そんなもの買っても、飾ったところを見ることなど一生出来るはずないので、購入には至らなかったが。
 と言うわけで、このイタリアン6シートは、一般住宅の室内で広げられる『ブレードランナー』のポスターで最大のものだと思っている。だがもちろん、これを書いている現在、そんな広い壁面に恵まれた生活などとは無縁の小さなマンション住まいである。当然ながらここにある画像は、3枚を別個に撮影したものをパソコン内で貼り合わせたものだ。だからこのような形での実物を、仮組みでさえ見たことは無い。

 この3枚組みポスターをリネンバックして壁に飾る・・・・コレクターはパノラマの夢を見るか?
 ああ、見続けるね。


1986. Italian. 39X55inch. Folded.

■やはり大判も欲しいのが人情ってものです

 海外版ポスターとの出会いは1988年に訪れたロンドンにて。SFショップやレコード店のポスター・コーナーにあった様々なリプリント・ポスター。日本版とは異なるデザイン、倍はあるかと思われたそのサイズに驚き嬉しくなった記憶がある(現在では国内でも大手外資系CD店や輸入雑貨店などで見かけるようになったが、80年代はまだまだ珍しかった)。
 その時何枚か購入した中にこのイタリア版のリプリントがあった。オリジナルもリプリントも区別のつかないビギナーだった頃は、そんな物でもフレームに入れて大事に飾っていたものである。ポスター・コレクションの世界への第一歩としていまだに処分せずに持っているが。

 Jouineau Bourdugeによるフランス版とほとんど同じデザインのイタリア版。UK版と比較すれば判るが、このデザインに必要なのは「縦」ではなく「横」の長さである。オープニング・ショットで見る者を驚愕させた未来のロサンゼルスの空撮映像は、シネスコ画面のせいもあって高さよりもむしろ奥行きと拡がりを強調した画であった。

 なんだかんだ言いながら、それでも大判を1枚欲しいと思ってしまうのがコレクター心理。大きいのは結構だが粒子の粗いこのサイズのポスターは、やはり狭い室内で鑑賞するものではないな、というのが正直な感想ではある。
 ゆえにフランス版よりも印刷精度の高いイタリア版の方を購入することに。タイトル・ロゴもUSオリジナルと全く同じもの(水平スリット入り)を使用。大きくて黄色いロゴもなかなか美しい。

 ただし、右下にあるマークが「PIC」ではなく「Waner Brothers」のマークだということは、86年のリヴァイヴァル版である。購入後しばらくして気付いた。