ALTERED STATES
『アルタード・ステーツ 未知への挑戦』(1980年)

1980. US Advance Foil 1 sheet. 25X39inch. Rolled.

■歩いて、車で、スプートニクで

 昔NHK−FMで放送していた坂本龍一の番組に鈴木慶一がゲスト出演し、リリースされたばかりのムーンライダーズのアルバム「アニマル・インデックス」を特集した時のこと。アルバムの最後に収録された曲「歩いて、車で、スプートニクで」を聴き終わった後、坂本龍一が開口一番「これって『アルタード・ステーツ』だよね」と言うと鈴木慶一が「そうそう」と答えるというトークがなされたと記憶している。1985年のことである。

 「記憶のすべて置いていけるか 来るべき知性に
  記録のすべて白紙にするか 去りゆく怪物」          作詞:鈴木慶一

 生命の起源・細胞の記憶を探るために、強力なドラッグを摂取してフローティング・タンクに身を浮かべた科学者(ニュー・サイエンスのジョン・C・リリー博士がモデル)が、研究にのめりこむあまり幻覚だけではなく自身の細胞にも変化をきたし、猿人からやがて謎の肉塊へと変身を遂げ、消滅しそうになったところを別れた妻に救われる。そもそも主人公が提唱する理論は怖ろしく刺激的だが科学性には乏しく(まるで『ある日どこかで』のタイム・トラベルのよう)、しかもデイヴィッド・リンチ同様、SF映画など撮っていいはずのないケン・ラッセルが撮ってしまったがゆえに、『デューン砂の惑星』と甲乙つけがたい大怪作としてSF映画史上に刻まれることとなってしまった。

 チープな美術と合成で作り出したケン・ラッセルお得意の幻覚シーンや化学薬品を使ったサイケな映像(『2001年宇宙の旅』でキューブリックがやった‘マンハッタン計画’と同じ)は失笑モノだが、リチャード・グリーンバーグ(『スーパーマン』『エイリアン』のタイトル・デザイナーでカイル・クーパーの師匠)による超クールなオープニング・タイトル、ディック・スミス(『エクソシスト』『スキャナーズ』)による独創的な特殊メイク、ジョーダン・クローネンウェス(『ブレードランナー』)のカメラ、とスタッフ陣は非常に魅力的だ。そしてこの映画はウィリアム・ハート、ドリュー・バリモアの映画デビュー作でもある。

 銅色に輝くフォイル版ポスター。ウィリアム・ハートの顔に貼り付けられたコードの赤・青・黄・緑色が美しく浮かび上がる。小さく描かれたタイトル文字の斜めになった「A」がクール。