2005年ポスターマン映画大賞


総数

183本  30年間映画を見続けてきて、劇場で1年間に見た183本という数は過去最多である。ちょうど2日に1本見ている計算になるわけだが、時間が自由になる自営業者とは言えどうしてそんなことが可能だったのだろう。ここ数年、毎年大体50〜60本は見て来たが、そこに新文芸坐で見た古い日本映画の本数を足すとほぼこの記録的な本数になる。新文芸坐はほとんどが2本立てだから、新作ばかり見ていたらこの数には到底ならないはず。それに岡本喜八、石井輝男の追悼上映や戦後60年を記念した企画などもあり新文芸坐の特集上映自体が非常に充実した年でもあった。

新作外国映画

46本
新作日本映画 14本
旧作外国映画 9本
旧作日本映画 114本


■ベスト5

2005年に公開された新作映画からベスト5を選びました。

1位 『復讐者に憐れみを』

2位 『ALWAYS 三丁目の夕日』

3位 『パッチギ!』

4位 『エターナル・サンシャイン』

5位 『セルラー』

 今年は残念ながら「何が何でもこの作品がベスト」というインパクトのある作品が無かった。なので結果的に3月に見た『復讐者に憐れみを』(制作年度は2002年)を1位とすることに。今年公開の新作映画でDVDもポスターも買ったのはこの作品だけであるから、別にOKなんだけどね。ちなみに昨年の『殺人の追憶』につづきまたもやベスト1は韓国映画である。2006年公開予定のポン・ジュノ監督の新作が1位になったりすると、こりゃ大変。と言うわけで『復讐者〜』の感想は「Poster Collection」の方で。
 2位は「寅さん的人情話」と「オタク魂」が融合したところが新しかった。それでもやっぱり、驚嘆しつつも味わい深いCGが主役だな。
 3位は今年唯一泣けた作品。恥ずかしいほどストレートな描き方だったが、薄っぺらな「純愛バブル」の中にあってあの気骨は重要。
 4位はミシェル・ゴンドリー&チャーリー・カウフマンという悪夢のコンビにも関わらず、とても素直に見れた。ジム・キャリー他キャスティングの威力か。
 5位は滑り込みでランクイン。自分の映画を見る目の甘さを反省。この映画を強く薦めてくれたバイナさんにこの場を借りてお礼申し上げます。

 5位以下は、『亡国のイージス』(実は2回見に行ったのこれだけ)『サイドウェイ』『ライフ・アクアティック』あたりになるかな。
 
 ちなみに、今年公開の新作以外の外国映画で最もインパクトがあり、思わずDVDまで購入したのはキム・ギドク監督作『魚と寝る女』だった。どっちにしても韓流なのね。


■ベスト・アクター&ベスト・アクトレス

2005年最も輝いていた海外の男優と女優。

イライジャ・ウッド  『ロード・オブ・ザ・リング』を終えた後、彼の俳優人生はどこへ向かうのか気になった人は多いはず。その答えが『エターナル・サンシャイン』であり『シン・シティ』であったことを大変嬉しく思う。彼は「ヘンタイ」の道を選んだのだ。
キルスティン・ダンスト  くどいようだが2005年は「日本における」いや「オレにおけるダンスト年」であった。『エターナル・サンシャイン』『ウィンブルドン』『エリザベスタウン』と見進めるうちに恋の炎は燃え上がった。来年の『マリー・アントワネット』で連続受賞を狙えるかも。


■ディスカバー・ジャパン

2005年に発見・再発見した古い日本映画のベスト作品たち。

1位 『セクシー地帯』(1961年 石井輝男監督)

2位 『少年』(1969年 大島渚監督)

3位 『ブルークリスマス』(1978年 岡本喜八監督)

4位 『七人の侍』(1954年 黒澤明監督)

5位 『浮雲』(1955年 成瀬巳喜男監督)
 新作の不調に反して、古い日本映画には素晴らしいものが多かった。初めて見た1位・2位は見終わった後もしばらく頭から離れなかった「引きずり系」作品だったし、20年ぶりに再見した3位はあらためてその面白さといかにも自分の好みであることを実感させられた(この3本は鑑賞後すぐにソフトを購入するほどであった)。
 4位は、ビデオで鑑賞済みだがこの年初めてスクリーンで見た。世界中の監督からリスペクトされ、映画史上ベスト10にランクインするのもうなずけるが、あのリアルなかっこよさはフェティシズムに裏打ちされたものだと判明。
 5位は、成瀬特集の中で結局最も印象強く最も「らしい」作品だった。見終わった直後はなんともどんよりした後味だったが、時間を経るにしたがってどんどん美しい映画になっていった。

 他には、増村保造特集で見た『巨人と玩具』『黒の試走車』、戦後60年企画での森谷司郎作品『首』、ATG特集中の『曽根崎心中』『初恋・地獄篇』『竜馬暗殺』など。
 初めて見て「こんな作品があったのかっ!」と驚いたり、「久し振りに見たけどやっぱいいわぁ〜」と再確認する喜びを噛みしめ新文芸坐を後にすることのなんと多かったことか。


■ディスカバー・アクター&ディスカバー・アクトレス

2005年に見た古い日本映画の中で発見したり再評価したりした往年の名男優と名女優を1人ずつ。

中丸忠雄  『日本沈没』『野性の証明』やTV特撮シリーズ『大鉄人17』などで顔は見ていたが、岡本喜八作品の回顧上映で初めて名前を憶えた。不敵な笑みをたたえた悪役にもうメロメロ。日本映画界屈指のダンディである。
 「アゴ割れ」「下膨れ」「スケベ顔」からジョン・トラボルタを連想せざるを得ず、『ソードフィッシュ』あたりのトラボルタと入れ替えたら恐らくハマリ過ぎ。実は彼、なんと東京芸術大学出身という変り種。しかも奥様は国際政治学者らしい。
高峰秀子  ご存知、成瀬巳喜男作品のミューズ。ゆで卵のような顔にあの面白い声。原節子みたいにハデなルックスの美人ではない。あからさまに色気をふりまくのではなく、普段は気丈に生きている女性がふと弱さを見せた時にこそ、高峰秀子のフェロモンは最大級に機能する。
 戦地で知り合った男性との不倫・流転人生を演じた『浮雲』、義理の弟に愛を告白されよろめく未亡人を演じた『乱れる』あたりが最高のツボ。あの可憐な唇に何度となく吸い寄せられた2005年。


■ワースト5

2005年、最も期待を裏切った5本。

1位 『カンフー・ハッスル』

2位 『南極日誌』

3位 『アビエイター』

4位 『ブラザーズ・グリム』

5位 『TAKESHIS'』
 1位は段トツでこれ。あまりのつまらなさに我が目を疑い再見するもさらに面白くなく。『少林サッカー』の後だけに過度な期待は禁物だったが、あれほどひどい作品を見せられるとは想像以上のショックだった。
 2位は、ソン・ガンホを無駄遣いした罪の大きさから。脚本も画も全くダメ。南極に見えないところがもう致命傷。川井憲次の音楽ももったいなかった。
 3位は、スコセッシのフィルモグラフィ中最悪に位置するほどの出来。ディカプリオと組むのはもうやめたほうがいいって!
 4位は、あまりにもハンパな出来。『未来世紀ブラジル』のような傑作をもう望んではいけないとはわかっちゃいるが、それにしてもあまりにもな凡庸さ加減。
 5位は、映画としては実はこの中で最悪の出来なんだが、期待が最も薄かった分ショックも無かったのでこの順位に。
 ちなみに次点は『エピソード3 シスの復讐』。ま、期待してませんでしたので。