1971. US 1 sheet Style A and B. 27X41inch.


「ニューヨークタイムズ」他、主に東海岸のメディアによるレヴューをこれでもかと並べたアメリカ版ポスター2種。
この手のレイアウトはアート系作品のポスターにありがちだが、2色刷りなのがまず残念だ。
サンドレッリとサンダのダンス・シーンをメインにしたヴィジュアルは結構だが、トランティニャンの扱いが実に気の毒である。
ヴェンティミリアの支部で拳銃を構えてみせる彼の姿はいかにも勇ましく映るものの、ポスター上ではこの描かれぶり。
しかもトランティニャンを抜き出して立たせたこの場所は何なのだろう?
壁から血が滴っているような演出も謎だ。あまりセンスの感じられないデザインである。

アメリカでの配給はパラマウントで、当時パラマウントのプロデューサーだったロバート・エヴァンスの自伝ドキュメンタリー
『くたばれ!ハリウッド』(2002年)ではエヴァンスの功績として『暗殺の森』のポスターも紹介されていた。
ちなみに『暗殺の森』と同年にマーズ・フィルム=パラマウントが製作した作品には『ボルサリーノ』などがある。








2014 Re-release. US 1 sheet. 27X40inch.


初公開版ポスターに比して、トランティニャンを思い切ってシルエットだけにしたこちらのデザインははるかにイイ。
しかしこのリヴァイヴァル版ポスターで特筆すべきは、上部にフィーチャーされた「ビル・アケム橋」である。
映画の冒頭でマルチェッロとマンガニェロの乗った自動車が橋の上を行く電車と並走するショットは、
ほんの1秒ほどしか映らないにも関わらず、鮮烈な印象を残し、この映画の映像美を形作る重要な要素となっている。

パリで有名な観光地の1つであり、数々の映画の撮影に使われたビル・アケム橋ではあるが、
ベルトルッチ作品のファンならずとも記憶に刻まれているのは『ラストタンゴ・イン・パリ』のファースト・シーンだろう。