‘SHIVERS’‘RABID’‘THE BROOD’Triple Bill Poster
3本立てポスター

British Quad. 30X40inch. Folded.

■夢の・・・いや悪夢の3本立て

 『スキャナーズ』以前の初期作品、『シーバース/人喰い生物の島』(1975年)、『ラビッド』(1977年)、『ザ・ブルード/怒りのメタファー』(1979年)を1度に見られる超お得な3本立てがイギリスで上映された際に制作されたポスターである。
 それぞれのメイン・イメージとタイトル、主演俳優の名前と簡単なコピーで構成された3色刷りのシンプルなもの。いかにも即席で作ったチープさがなんともイイ味を出している。「1人で見るな・・・みんなで見ろ!さあ!」・・・・ホラーだねぇ。
 かつて「プリンス・オブ・ホラー」の異名をとったクローネンバーグのエヴァーグリーンな作品たちが1枚の紙の上に集合。プログラムはもちろんのこと、このポスター自体にもお得感がある。

 実を言うと、『ザ・ブルード』はともかく、『シーバース』と『ラビッド』を面白く見た記憶が無い。
 70年代特有のムードとクローネンバーグにしては珍しい「わかりやすいエロ」はいいが、単なる説明不足と演出の未熟から来る難解さがどうにも頂けなかった。クローネンバーグ哲学の萌芽であることは確かであるし、どれも初期フィルモグラフィ中かなり重要な作品であることは理解している。『シーバース』に漂っていた文明観と静かな狂気は、後に満を持して手掛けることになるJ・G・バラードへのアプローチを感じさせるものだ。
 しかし、前期クローネンバーグ作品の撮影監督マーク・アーウィンと今でもクローネンバーグの右腕である美術のキャロル・スピアが揃う以前の作品であるため、クローネンバーグらしい画を見ることが出来ない、というのがこの2作品を前向きに見直そうという気を萎えさせる。
 低予算B級ホラーという意味では愛すべき3作品だが、現在に至るクローネンバーグの美学に直結していると言えば、やはり『ザ・ブルード』だ。