DAMNATION ALLEY
『世界が燃えつきる日』(1977年)



1977. US 1 Sheet. 27X41inch. Rolled.

ランドマスター、竜巻、稲光、洪水などお馴染みの要素で構成されているものの、
日本版ポスターとは随分と印象が異なる。
スターを起用したわりには、彼らの顔で売る気は無かったようだ。


1977. British Quad. 30X40inch. Folded.

デヴィッド・キャラダイン&ケイト・ジャクソン主演作品『ランナウェイ』との2本立て。
ボンクラ度100%、グラインドハウス魂が炸裂した素晴らしい英国版ポスター。

■Go!Go!クソ映画

 この映画のことを記憶している人がどのくらいいるだろうか。

 核戦争後の荒廃した未来、異常気象で嵐が吹き荒れ、巨大サソリやゴキブリの群れが襲い来る世界を舞台に、アリゾナの軍事基地〜ラスベガス〜デトロイト〜ニューヨークと、生存者と新天地を求めてアメリカを横断する特殊装甲車「ランドマスター」の乗組員の冒険を、お世辞にも良い出来とは言えない特撮と金のかかってないロケ撮影、ご都合主義の設定と腑抜けた脚本でなんとか形にしたSF映画である。アメリカでは77年5月に『スターウォーズ』が公開され、一気にSFブームに。『世界が燃えつきる日』はその年の10月に公開されていることから、いかにバブルに便乗した突貫工事的作品だったかが伺える。

 出演は‘『ティファニーで朝食を』以後『特攻野郎Aチーム』以前’のジョージ・ペパード。『ビッグ・ウェンズデー』のジャン・マイケル・ビンセント。ヴォーグのモデル出身にして70年代ヨーロッパ映画の女神、ドミニク・サンダ。『がんばれ!ベアーズ』で子役スターとして人気上昇中だったジャッキー・アール・ヘイリーなど。『ジョーズ』で市長を演じた(というか『卒業』のMr.ロビンソン)マーレイ・ハミルトンの姿もあった(ただしノー・クレジット)。このクソ映画が苦しいながらもなんとか超大作の体裁を保てたのは、彼ら俳優たちの知名度によるところが大きかった。ただし、確実に彼らのフィルモグラフィ中の汚点になったはず。

 小生は何を血迷ったか、このクソ映画を親にせがんで群馬からわざわざ上京し、銀座のテアトル東京で見ている。シネラマ用巨大スクリーンに映すのがもったいないような映画ではあったが、「SOUND 360」という立体音響(こんなのまあ今ではフツーだが)に度肝を抜かれた記憶がある。厳密には、「立体音響」ではなくその「音量」に驚いたのだが、冒頭で起こる全面核戦争の映像(記録フィルムを赤く着色しただけのもの)と共に炸裂する大轟音の洪水に震え上がったのである。映画体験に音響がもたらす効果がいかに絶大であるかを、あの時に初めて知った。とにかく音だけは凄かったのだ。

 『スターウォーズ』『未知との遭遇』『エイリアン』といったエポック・メイキングな作品が並ぶ70年代後半のSFブームを振り返った時、間違ってもこの作品を再評価しようという人間などいないはずだ。小生だって評価しない。ただ、この作品が今でも好きなだけである。理由は判らないが。