Diary

■2006年1月

06.01.30


■LDを手放せない

 実はLD(レーザーディスク)プレーヤーを持っている。現在所有の物は2台目で、1996年頃に購入したもの(恐らく『セブン』の輸入LD−BOXを見るために買い換えたんじゃなかったか?)。ちょっとガタが来てるがまだ十分動くしもちろん再生にも問題は無い。
 今のマンションに越して来てそれまで後生大事に持っていたLDソフトを大量に処分した。時代は加速度的にDVDを受け入れていたし、大きくて重くて2時間以上の映画を再生するためにはディスクを差し替えなきゃいけなくてしかも画質はDVDよりも劣るという厄介な物を、何十枚も置いておけるスペースなどこの狭い住居の中に確保出来なかったからだ。
 「今度見たくなったらDVDを買おう」と思い切って捨てられた大量のLD。もったいない話ではあるが、仕方がない。心を鬼にしてジャケットはちぎって可燃ゴミに、LD盤は重ねて縛りベランダに置いた物干し台の「重し」にした。ところが、捨てられなかった物がある。それはその時点でDVD化されていないタイトルであった。

 『ブレードランナー』は「ディレクターズカット最終版」しかDVD化されず、「初公開版」および数カットを追加した「完全版」はLDとVHSでしか見ることが出来ない(ここ数年噂されている「コレクターズDVD−BOX」リリースについては別の機会に・・・)。
 『ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録』は、『地獄の黙示録』の撮影風景や出演者への貴重なインタビューで構成された驚愕のドキュメンタリーだが、権利問題などを理由に今後DVD化される見込みは無いと言われている。
 『北野武監督全集』というBOXセットに付属している『ソナチネ』のメイキングドキュメンタリー(NHK制作によるもの)を収録した特典ディスクもDVD化される望みは薄い。
 他にも『ラスト・エンペラー』の3時間39分もある完全ヴァージョンやヴァイオレンス・コメディの超傑作『ありふれた事件』もいまだにDVD化されていない。
 ジャケットのデザインが素晴らしいという理由で捨てられなかったタイトルもある。『ジェイコブス・ラダー』(劇中に登場する悪魔の写真を並べたもの)、『太陽を盗んだ男』(ジュリーの写真がイカす)、『119』(安齋肇のイラストが可愛い)などなど。

 そして最近、もう見たくて見たくてDVD化を待てずに思わず中古LDをヤフオクで落札してしまった映画がある。ベルナルド・ベルトルッチの『1900年』(1976年度作品)である。第一部と第二部を合わせた上映時間はなんと5時間16分。偶然同じ日に生まれた大地主の孫と小作人の孫が歩む愛憎の生涯を軸に、階級闘争、共産主義、ファシズムの嵐が吹き荒れる20世紀前半のイタリアを描いた歴史絵巻。ロバート・デ・ニーロ、ジェラール・ドパルデューを主演にバート・ランカスター、スターリング・ヘイドン、ドナルド・サザーランドが脇を固め、ドミニク・サンダとステファニア・サンドレッリの『暗殺の森』コンビが華を添えるという贅沢なキャスティングに、ヴィットリオ・ストラーロ操る魔法のようなカメラワークとエンニオ・モリコーネの格調高いスコア。ファンの間では「ベルトルッチ作品のベスト1」という声も多い映画史に残る名作であるが、なんといまだにDVD化されていないのだ。
 『ロード・オブ・ザ・リング』のおかげで長尺の映画に対する免疫が出来てはいたものの、この5時間16分はやっぱり凄かった。夕方5時前に見始めて、途中夕飯による中断をはさみ、見終わったのが夜11時過ぎ。話の展開にムラがある出来の良くない脚本ではあるが、そんなことよりも「長い」ということが重要だ。長い映画にダラダラと付き合ううちに脳内にヘンな汁が出て来て、えもいわれぬ幸福感に包まれる。そして見終えた時の達成感。10年以上前、今は無き渋谷東急でリバイバル公開された時以来久し振りに味わった感覚である。デ・ニーロもドパルデューも若〜い!


06.01.24


■新春ペ・ドゥナ祭り

『子猫をお願い』(2001年)
『ほえる犬は噛まない』(2000年)
 新文芸坐で始まった
「“韓流”シネマコレクション2006」の初日はペ・ドゥナ2本立て。昨年のベスト1『復讐者に憐れみを』で見せた体当たり演技で小生を完全にKOした「ドゥナっち」(これからはこう呼ばせて頂きます)。『殺人の追憶』で監督ポン・ジュノの才能に驚き、その前作『ほえる犬は噛まない』をビデオで見た際、ポン・ジュノの演出よりも彼女の魅力の方にむしろ心を奪われたものだ。
 ドゥナっち・・・やっぱ気持ち悪いのでやめた、ペ・ドゥナは全然美人ではない。鼻が大きいし唇の形も色気が無い。痩せていて手足がヒョロリとしている。髪はショートしか似合わない。フェロモンはゼロ。試しにモニカ・ベルッチの横に立たせたら、「これが同じ女か?」どころかベルッチの連れてる愛玩動物にしか見えないだろう。
 イ・ヨンエやチェ・ジウのような韓流ビューティー然とした容貌と無縁のペ・ドゥナの魅力は、じゃあ何だろう?それは「妹力」(いもうとりょく)ではないだろうか。不細工で色気が無くて煙草を吸っていてヒネくれていてやや情緒不安定で・・・・それでもあの大きなキラキラした眼でじっと見つめられ「兄貴ぃ」などと言われたらもう骨抜きだな(おいおい)。そう言えば『復讐者に憐れみを』で披露したヌードには見ていてどこか痛々しく、何か見てはいけないものを見てしまっているような気分を味わった記憶がある。やはり「妹力」のせいなのか。
 ちなみに今年公開予定のポン・ジュノ監督最新作『怪物』はソン・ガンホとペ・ドゥナが主演である。このトリオが作り出すであろう斬新な怪獣映画にもはや期待し過ぎを抑えることが出来なくなっている。
 『ほえる犬〜』にはデブ女(『親切なクムジャさん』での怪演が記憶に新しい)が駐車中の乗用車のドアミラーを跳び蹴りでもぎ取るシーンがあり、『殺人の追憶』でもソン・ガンホがワイヤーアクション無しの見事な跳び蹴りを見せている。新作でも誰かが跳び蹴りをかましてくれますように!


■世界美少女コンテスト2006グランプリ発表!

『ダウン・イン・ザ・バレー』
 何を隠そうエヴァン・レイチェル・ウッドを見たくてわざわざ渋谷までこの映画を見に行った。
 以前どこかの劇場で見たこの映画の予告編であまりの美少女っぷりにドキッとした。お話の方はハデさの無いいかにも「インデペンデント系」らしい作品とお見受けしたので当初見るつもりは無かったのだが、どうにもこうにもあの美少女だけが気になる。ある日MTVで流れた映画さながらのGreen Dayのプロモにジェイミー・ベルと一緒に出演しているあの美少女を発見。ダメだ、やはり見たい・・・。雑誌「映画秘宝」に載っていたセクシーな写真がさらに火に油をそそぐ。ああ・・・これは恋?恋なのだな。恋に違いない。
 見てる間鼻の下が伸び過ぎて床に着いちゃうんじゃなかろーかというくらい、うっとりしまくり&目がハートになりまくりだった。イイ歳こいてガソリンスタンドでタラタラ働いてたら、車のリアガラス越しに17歳の胸元の眩しい美少女に見つめられ、海水浴に誘われたので仕事を投げ出し、泳いでるうちに波間で抱き合ってキスして・・・・これは男の、いや全中年男の夢と希望だ。睡眠中にこんな夢を見たらそのまま永眠するべきだろう。かつてのジェニファー・コネリーが装備していた「中年男キリングビーム」をジェニファー直々に受け継いだのがこのエヴァン・レイチェル・ウッドだと断言する。さあ殺せ!殺してくれ!
 で・・・お話?働きもせずにプラプラして「おれはカウボーイだぜ」などとイイ歳こいてほざいてる男を、頭の固いお父さんが可愛い娘から追っ払う話だった、案の定。地味だが味わいのある作品、というやつ。
 鏡に向かってガンマンを気取るエドワード・ノートンの姿に、『タクシードライバー』をリメイクするんだったらこの人しかいないなあと確信。と言うか、不眠症の男がでっかいことやって世間を驚かすという点で、『ファイトクラブ』は90年代の『タクシードライバー』だったのだな。

■アフロとハゲ

『東京ゾンビ』
 『殺し屋1』で素晴らしい腕を見せた脚本家佐藤佐吉の初監督作。浅野忠信のアフロヘアと哀川翔のハゲヅラというヴィジュアルインパクトが先行し過ぎてしまい、作品そのものはなんともお粗末な仕上がり。あまりにも各カットの間が悪く、ギャグが成立する前に冷めてしまい、残るのは恥ずかしさのみ。往年の東映破天荒アクション&ギャグ(中島貞夫の『狂った野獣』や石井輝男の『直撃地獄拳 大逆転』など)へのリスペクトとも言えるノリや画を見せるものの、先人たちの技には遠く及ばず。
 何か1つでも良いところ?う〜ん・・・・奥田恵梨華の太ももかな(こんなのばっかり)。


■最大の見せ場はあれだけかよ(あ、ネタバレしてますよ)

『Mr.&Mrs.スミス』
 上記の『東京ゾンビ』同様、主演スター2トップのみで突破しようという「企画もの」の匂いが漂う作品だが、なんたってプラピとアンジョリだし監督は『ボーン・アイデンティティ』の人だしで結構面白く見ちゃった。2人のギャラに金を遣い過ぎたのか有名脇役はヴィンス・ヴォーンのみというのが気になったが、まあ別に必要も無いのか。
 倦怠期の夫婦が最新鋭の銃器とメカで殺しあうコメディかと思ってたら、もう少しヒネリがあったね。面白かった。話の展開が割りとイイ。冒頭の若い社員(?)が終盤で再登場して事の真相が明らかになるところでは子供のようにびっくりしちゃった。
 その再登場した若い男が『ファイトクラブ』のTシャツ着てたり、敵(=見方)に囲まれたスミス夫妻が南米を夢見て銃を手に飛び出す場面が『明日に向かって撃て!』を真似てたりの判り易い遊び心もあり。
 しかしこれ、結果的にアンジョリの映画だったね。とにかくカッコよくてキレイだった。ブラピに比べりゃ演技は断然上手いし、ボンデージファッションまでご馳走してくれはりました。「超ナイスバディの美女が男勝りに銃器を扱うと画になる」という伝統(?)にまた1つ新たなページが加わったのだな。
 でもね、映画の公開に合わせるかのように2人のお熱い関係が知れ渡ったところでもってさ、この映画最大の見せ場であり観客が一番望んだクライマックスは、派手なカーチェイスでも銃撃戦でもなくて2人の濃厚なベッドシーンだったんじゃないのか?


06.01.09


■今年最初の映画

『ロード・オブ・ウォー』
 工場の生産ラインからスタートしアフリカで少年の額をブチ抜くまでの「一発の弾丸の旅」を見せるオープニングが秀逸。ただしもうちょっとCGが巧ければ良かったが。
 題材としては相当に面白い。映画ではなかなか真正面から描かれることの無かった職業だ。とても興味深く見たが、残念ながらどうにも消化不良だった。「凄腕の武器商人」と「良き家庭人」という2面性を見せようとしたがために(さらに主人公の両親や弟まで盛り込もうとする欲張り)せっかくの面白いテーマが宙ぶらりんだ。それに主人公がどのように武器密輸に手を染めて行ったのかを説明する必要など果たしてあったのかどうか。むしろ主人公の出自やプライベートを全く謎にし、「武器商人」「クライアント」「武器密輸Gメン」の三つ巴のアクション・エンターテインメントとして描いた方が効果的だったのではないか?劇画『ゴルゴ13』みたいにさ。
 『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』を思い出すね。あれも主人公の夫婦問題やポーランド移民のアイデンティティなんぞを盛り込んだおかげで、チャイニーズマフィアとの攻防を全然描き切れずに終わった(でも好きだけど)。 
 気の利いたブラックなセリフをもっと連発して、主人公をとことん(それこそ「ジェームズ・ボンド」ばりに)魅力的に描くことでも「こんなビジネスが成り立つこの狂った世界をあんたどう思う?」というメッセージを投げかけることは出来たはず。アンドリュー・ニコルの真面目な性格が災いしたと見た。
 例えば『ファイトクラブ』や『チーム・アメリカ』のようなアプローチが可能だったのに彼にはそれが出来なかった。「倫理」や「正義」に惑わされてお行儀の良い不完全燃焼なブラックユーモア作品にしておいて最後に「この映画は事実に基づく」などというテロップを出すくらいなら、とことん不道徳にエンターテインメントしておいて「この作品は全くのフィクションです」とカマしたほうがよっぽど潔いよ。
 それでもこういうサツバツとした作品は好みだな。『ザ・セル』『トラフィック』『ファイトクラブ』に通ずる空気感がある。ニコラス・ケイジもハマってた。これをエドワード・ノートンでやったりするとハマり過ぎで返って嫌味か。
 とにもかくにもこれが2006年一発目の映画。昨年の一発目『カンフー・ハッスル』に比べりゃ立派なもの(比べちゃ失礼だろ)。65点なり!


■そう言えば、初夢

 家内の実家に泊まった1日の晩(つうか2日の朝)に見た夢。

 パスタを茹でようとしている小生。
 パスタ箱の中には5〜6種類の乾燥パスタが。
 そのうち1袋はなぜか「そうめん」。 
 どれを茹でようか思案している。
 隣の部屋にはエド・ハリスがいる。
 すかさず尋ねる。
 「どれ茹でましょうか?」
 「つるつるしたやつ」
 ん???”つるつる”ってどれだ?
 そうめんか?いや、パスタじゃないじゃん。

 ここで目が覚めた。


■でもって、初怒り

 雑誌「Invitation」最新号に掲載されてる映画『どろろ』のプロデューサーのインタビューとコンセプチュアル・アート・・・・ああ、もう本当にやめてくれ。どうして『どろろ』を選んだんだ?他の作品ならいい。でも『どろろ』だけは勘弁して欲しい。読んでいて怒りでワナワナ震えたよ。映画のトレンドを予想した結果立ち上げた企画が『どろろ』だとよっ。なんだそりゃっ!

■でもって、今年の抱負

 「いたずら半分」

 ま、これって座右の銘でもあるな。
 ちなみに「ああなりたい」人NO.1は、吾妻ひでおのマンガ『ネムタくん』に登場する「三蔵」。









■2006年に期待するA

『太陽』
 ロシアの映画監督アレクサンドル・ソクーロフが昭和天皇を描いた!ある意味今年最も期待する作品。天皇にイッセー尾形、皇后に桃井かおり。でもロシア映画ね。一説には3月頃の日本公開が決まったらしいが詳細は不明。なんたってこれ以上のタブーは無いからね、日本にとって。

『HAZE』
 なんと塚本晋也の新作が早くも公開に。ストーリーは謎だが主演は塚本本人と『東京フィスト』の藤井かほり嬢!ああ、うれしい。

『ナイトウォッチ』
 ロシア製のホラーファンタジー三部作の@。予告編見たけどSFXがい〜い感じだった。


 今年もまあ良い年になりますように。


06.01.04


■2006年に期待する

 昨年はガツンと来る作品、何度も映画館に足を運ぶような作品、いつまでもズルズルと反芻して楽しめるような作品が無くなんとも寂しかった。せっかく映画を見始めて30周年だったと言うのに。だから今年公開予定の作品に大いに期待!

『ホテル・ルワンダ』 公開するための署名運動に署名しました!
『ジャーヘッド』 21世紀の『マッシュ』『フルメタル・ジャケット』になるか!?
『ミュンヘン』 スピルバーグのハード・ヴァイオレンス再び!
『ヒストリー・オブ・ヴァイオレンス』 クローネンバーグの新作!んぐああぁっ!
『シリアナ』 予告編見たけど面白そうだよ!
『怪物』 ポン・ジュノの新作はソン・ガンホとペ・ドゥナ主演の怪獣映画だ!
『ブラック・ダリア』 例の有名な猟奇殺人を扱ったデ・パルマの新作!
『インランド・エンパイア』 リンチの新作はなんとローラ・ダーンとジェレミー・アイアンズ主演!
『ゾディアック』 D・フィンチャーが久し振りに「シリアル・キラーもの」を!

 とまあ、やたらと「!」を付けて過度に期待してみました。何と言ってもクローネンバーグ、リンチ、フィンチャーの「デイヴィッド3人衆」の新作が1年のうちに揃いそうなのがすごい。それでも、『殺人の追憶』の後だけにポン・ジュノが何を見せてくれるのかが最も気になったりもする・・・・ああ、たまりませんねえ。

 ちなみに『スターシップ・トゥルーパーズ』以来ごぶさたしているポール・ヴァーホーヴェン将軍は『Zwartboek』なる作品を撮影中。これはもうちょっと先のことになりそうかな。


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