Diary

■2006年4月

06.04.25
■13時間耐久レース

『ロード・オブ・ザ・リング』 メモリアル 3部作一挙上映 at 池袋新文芸坐

 ついに実現した新文芸坐での全3作の一挙上映。しかも全てが「スペシャル・エクステンデッド・エディション」。夕方5時にスタートして、まずはエルフ語を研究してる先生のトーク&予告編大会が30分、それから途中30分休憩2回と15分休憩1回を挟んで上映終了したのが翌朝6時ちょい過ぎ。全“行程”13時間超えという未知の映画(館)体験だった。
 3部作を連続して見ることで得られる最も大きなもの。それはあの疲労感だ。とにかくただ映画を見るだけであれほど疲れたことは今までに無い。1日で3本をハシゴ鑑賞したのではなく、ひとつの物語が11時間以上ある映画を見たのだ。

 蓄積する疲労感は登場人物、特にフロドとサムへのシンクロ率をどんどん高めることになる。いまだかつて無いほど彼らに愛情を持ちながら見た。だから今回最も心打たれたのは、歩けなくなったフロドを「指輪はダメでもフロド様なら背負える」と言ってサムが担ぐ場面だった。あの時のサムの表情が涙を誘う。

 以前より3部作にはそれぞれキー・パースンがいると思っていた。「旅の仲間」では、指輪の誘惑に負けながらも勇者として死んでいったボロミア。「二つの塔」では、指輪への純粋な愛を貫くゴラム。そして「王の帰還」で長大な物語の幕を閉めるサムである。
 指輪をめぐる物語を回転させるのはガンダルフやアラゴルンたち魅力的な大勢のキャラクターたちであり、その回転の中心にいるフロドは「指輪の乗り物」にしか過ぎず、遠心力のせいでパーソナリティすら希薄な印象すらあった(大友克洋の『アキラ』で絶対的なパワーを持つ張本人“アキラ”の人格が描かれなかったように)。つまりサムがぴったり寄り添っているからこそフロドはフロドたり得ていたのだ。

 ところが今回の連続鑑賞によって、フロドの存在の大きさを思い知らされた。「指輪の乗り物」という使命に徹する苦難の旅。その道程で彼の生き生きした笑顔はどんどん失われていく。疲労困憊し、指輪の魔力で白目をむき、サムにさえ疑心暗鬼になるフロド。彼の苦悶の表情が見ているこちらの疲労感をダイレクトに刺激する。そして、この使命が彼の命と引き替えであることを知った上で付き合うこの11時間のなんという重さよ。新時代を迎えるための最終戦争のコアで重い指輪にひたすら苦しみ続ける「小さき者」は、新しい時代に生きることを許されないのだ。

 連続鑑賞してあらためて思う。しかも各キャラクターのエピソードが大きく増えた「スペシャル・エクステンデッド・エディション」を見てもなおこう思う。
 『ロード・オブ・ザ・リング』はフロドのための映画である、と。


■松竹110年

『晩春』(1949年)
『東京物語』(1953年)
『お茶漬けの味』(1952年)
『麦秋』(1951年)

 この4本全てに出演しているのは笠智衆と三宅邦子。原節子と杉村春子と高橋とよが3本。2本に出てるのは東山千栄子、淡島千景、十朱久雄など。

 原節子の役名は3本とも「紀子」である。

 『お茶漬けの味』以外の3本は全て家長の名前が「周吉」である。

 笠智衆と原節子は『晩春』で父と娘を、『麦秋』で兄と妹を、『東京物語』で父と次男の嫁を演じている。

 杉村春子は『晩春』で笠智衆の妹を、『麦秋』で原節子の義母(になる人)を、『東京物語』では笠智衆の娘を演じている。そして全てに泣くシーンがある。

 高橋とよ(豊子)は『晩春』でお手伝いさんを、『麦秋』では料亭の女将を、『東京物語』では隣家のおばさんを演じている。

 東山千栄子は『麦秋』では笠智衆の母を、『東京物語』では笠の妻を演じている。

 村瀬禪という子役が『麦秋』と『東京物語』に出ているが両方とも母親役は三宅邦子である。 

 2本に「北鎌倉駅」が、2本に洋食屋「カロリー軒」が、2本に小料理屋「多喜川」が、2本に歌舞伎座が登場する。

 『晩春』も『麦秋』も原節子を嫁に出す話である。

 ・・・・これが小津安二郎の宇宙である。
 


06.04.18
■最近DVDで再見した4本(下線はポスター画像あり)

『ブルークリスマス』(1978年)

 昨年新文芸坐での「岡本喜八特集」で20年ぶりに再見。見た後何日もボーッとなったほど惚れ込んだ映画がやっとのことでDVD化された。
 UFOを目撃したことで血が青く変色した人々。侵略者なのかどうかも判らないまま彼らをめぐって奔走する科学者、政府、自衛隊、マスコミなどの姿をテンポ良く描き、やがて浮かび上がる世界規模の謀略とジェノサイド実行の日=クリスマスへとひた走る物語をサスペンスフルに見せる岡本喜八の手腕には心底脱帽。シンセサイザーやタブラなども取り入れた佐藤勝によるセンチメンタルかつクールな音楽が、終末感ただよう映像に見事にハマっている。
 だが、公開当時の批評は芳しくなく、ネット上で見られる感想なども酷評がほとんど。肝心のUFOを見せないばかりかその目的も不明のまま。ニューヨーク、パリにロケはしたもののスケール感を出せず。世界レベルの謀略も日本国内で撮ったと思しきショボい画と静止画と字幕に頼るばかり。結局は赤い血の自衛官と青い血の恋人の悲恋がクライマックス・・・・などなど。もちろん彼らのツッコミどころが理解出来ないわけではない。だから仕方ないのでこう言おう。

 世の中には2種類の人間がいる。
 『ブルークリスマス』が好きな人間と、そうではない人間だ。

 ライナーノーツで庵野秀明が書いている。「魂がこの映画を好きなのだ」と。小生も同感である。
 「日本映画の中から5本選べ」と言われれば、何の迷いも無く小生は『ブルークリスマス』を入れる。


『セクシー地帯』(1961年)

 これで3度目だが、とにかく全篇ウットリしっ放しだ。銀座・新橋・浅草を活写する手持ちカメラ。夜の空気。光り輝くネオン。路地裏の闇。映し出される昭和30年代のストリートとジャズがシンクロし、生き生きとした三原葉子はまるでゴダール作品『男と女のいる舗道』のアンナ・カリーナのようだ。
 エロ・グロ・猟奇で一世を風靡した石井輝男がこれほどまでに垢抜けたダンディズムを見せるとは繰り返し驚嘆する。超シャレたタイトルバックから幕引きまで、完璧な82分。


『カサンドラ・クロス』(1976年)

 クライマックスでの鉄橋崩壊映像以外は全て本物の列車を使ったところになんとも贅沢な味わいがある。特にヨーロッパの田園地帯を走る列車を滑らかな空撮で捉えたショットにはため息の連続。70年代のヨーロッパ映画独特のしっとりした色合いの映像に、アメリカ製オールスター・パニック映画とは趣の異なるキャスティングが加わって、重厚な雰囲気満点だ。リチャード・ハリスがすこぶるかっこよく、ソフィア・ローレンはまだ充分美しい。ユダヤ人収容所の暗い記憶を呼び覚まされる老人(さすが!リー・ストラスバーグ)を物語の中心に据えるところなんぞもヨーロッパが舞台ならではだろう。
 リアルタイムで『タワーリング・インフェルノ』を見ることが出来なかった小生にとって、結果この映画は「70年代パニック映画ブーム」中最も思い出深い作品となった。30年経った今、決して「今見ても古くなっていない」とは言わないが、CGによる昨今の薄っぺらなスペクタクルを全く寄せ付けない「いぶし銀」の魅力を放っていることは確か。


『チャイナタウン』(1974年)

 先日「Writers Guild Of America(アメリカ脚本家協会)」が選んだ「101 Greatest Screenplays(最も偉大な映画脚本101)」が発表された。第1位は『カサブランカ』、2位は『ゴッドファーザー』、そして3位に『チャイナタウン』が選ばれた。ちなみに4位はあの『市民ケーン』である。
 『カサブランカ』も『ゴッドファーザー』もオリジナル脚本ではなく‘脚色’であるから、『チャイナタウン』は実質的にアメリカ映画史上最高のオリジナル脚本ということになる。
 これを書いたロバート・タウンは、その腕を見込まれてコッポラに呼ばれ、『ゴッドファーザー』での重要なシーン・・・マーロン・ブランドとアル・パチーノが屋外で語らうあの「ドン継承場面」の脚本を書いたことでも知られている。
 今回久し振りに見直した。素晴らしい。完璧だ。小生は『チャイナタウン』を長いことオールタイムベスト5に入れて来たが、それが間違ってなかったことを確信した。

 『チャイナタウン』UK版ポスターに付けたテキストを今回思わず書き直しました。

06.04.12
■そう言えばこれ書くの忘れてたよ

『SAYURI』

 SF用語で「多重世界(パラレル・ワールド)」という言葉がある。この世界そっくりなんだけど、いろんな部分が微妙にズレてるもう1つの世界。この映画で描かれる日本てのがまさにそういう雰囲気。全体に漂う「これ・・・なんか違う」感。「国辱」なんぞと怒ったら大人気無い。この手の映画はこういうところを楽しまねば。
 日本人としては、渡辺謙や桃井かおりや役所広司や工藤夕貴がハリウッド作品、しかもスピルバーグ製作の作品で大きな役を演じていることに感慨や誇りを持つべきなのかも知れないが、張芸謀作品を見続けて来た者にとっては、そんなことより何よりチャン・ツィーイーVSコン・リーという「新旧チャン・イーモウのミューズ対決」の方に関心が。熱いねぇ〜。コン・リーのあの意地悪っぷりの根底にあるのがチャン・イーモウを奪われた怨恨だと考えるとすんなり納得出来ちゃう。怖いねぇ〜、女ってなぁ。


■ペ・ドゥナ、かすむ

『リンダリンダリンダ』

 文化祭の最中の高校(ロケは小生の郷里、群馬県)を舞台に、「ザ・ブルーハーツ」のコピー・バンドをやろうとする軽音楽部の女子3人と、たまたま通りかかっただけでヴォーカルをやるハメになった韓国からの留学生が送る、もしかして彼女たちの人生で後にも先にも最もクールな3日間。現在の高校生をどの程度リアルに描けてるのかは判らないが、もし今、小生が10代だったらこの映画に夢中になったはずだ。
 いろいろあるが最後にはバンド演奏を成し遂げる彼女たちのサクセス・ストーリーが、大仰な芝居や劇的な展開を廃し、さらにはかつて相米慎二が得意として来た‘不自然な自然’とも違ったアプローチで、淡々と語られていく。留学生ペ・ドゥナという異邦人が介入することで、バラバラだったバンドがうまい具合にまとまるとか、そうすることで日韓交流の成果を描くとかいうイヤらしいあざとさとも無縁だ。だからこそラストがすがすがしい。

 以前日記にも書いたし、「Poster Collection」の『復讐者に憐れみを』の項でも触れているように、ペ・ドゥナが大好きだ。鼻が大き過ぎてちょっとブサイクなところも含めてなんとも可愛い。『吠える犬は噛まない』『子猫をよろしく』もそうだが、彼女の基本はふてくされた顔で我が道を行く芯の強い女の子である。しかし、そのムスッとした表情の合間に見せるキラキラした笑顔におじさんの胸はキュンとなってしまう。
 がしかし・・・・今回のペ・ドゥナには全くキュンと来ない。何故なら・・・・前田亜季があまりにも愛くるしく、香椎由宇がとてつもなく美しかったからだ!ラストの生脚も眩し過ぎだろっ!
 おじさんは一体どーすりゃいいんだよっ!えぇ?ああっもうっ・・・・。


■幻の映画デビュー

『HAZE』

 塚本晋也監督が現在撮影中の次回作『悪夢探偵』のエキストラに応募していた。『鉄男』以来の塚本ファンとしては、1度その作品に出てみたい。どんなに小さくてもいいから彼の撮ったフィルムに己の姿を刻みたい。ただその一心で、ネット上で募集していたエキストラに応募した。
 何週間か後、「海獣シアター」(塚本の制作プロ)から電話があった。近々都内で撮影があるから来て欲しいという連絡だった。聞けば、殺人現場での警察の鑑識の役だという。凄いぞ。通行人やモブ・シーンのその他大勢ではない、エキストラにしては大きな役だ。もちろん絶対ちゃんと映るだろう。信じられない。セリフもあったりしてな。うれしい。是非ともやりたい。「で、撮影は何日ですか?」という質問に相手が答えた日にちは、なんと、郷里で入院中の父親の手術日だった。こうして小生の野望は消え去った。

 塚本の新作『HAZE』を見た。フィルムではなくビデオで撮影しデジタル編集で仕上げた1時間弱の中篇だ。ふと目覚めたら腹に刺し傷を負い暗く狭いコンクリートの迷路に閉じ込められていた男の、悪夢の脱出譚。途中で出会う、やはり刺し傷を負った女との地獄めぐりの果てにある光。『CUBE』や『ジェイコブス・ラダー』を彷彿とさせるこの作品は、『六月の蛇』『ヴィタール』と併せて「‘愛と死を見つめて’三部作」と言えるだろう。素晴らしい。見事な完成度だ。どこからどこまでも「塚本印」である。
 『東京フィスト』から10年、藤井かほりが年齢を全く感じさせない美しさを見せる(なんと小生と同い年だ!)。96年の高崎映画祭のパーティーでは塚本監督と藤井嬢にお会いし、声をかけさせて頂いた。気さくな監督は、小生の「『東京フィスト』でクローネンバーグを超えましたね」という誉め殺しに「何言ってんだよう」と照れ笑いをしたり、「どんな音楽がお好きですか?」という質問には「ミニストリーからユーミンまで何でも聴くよ」と答えてくれたりで、こちらも全く緊張せずに歓談出来た。一方、藤井かほりには「舞台挨拶の日に行きました・・・」とか「昨年のベスト1です・・・」なんて言葉くらいで精一杯。目も合わせられないし、握手の時には手が震える始末。とにかく、「この世の中にこんなにも美しい女性がいたのか」とため息が出たね。
 その時にサインを頂いたポスターがこれ。





















06.04.07
■やかましいホラーは怖くない

『エミリー・ローズ』

 実話をもとにしたという「オカルト」+「法廷モノ」。1粒で2度美味しいかと思いきや、どちらも大味で参りました。「この裁判自体を悪魔が邪魔しているかも知れない」という電波なセリフの面白味が結局生きずに、凡庸でどこかで見たようなホラー描写に終始。「ドンッ!」とか「バンッ!」とか「ギャンッ!」とか大きな音で威かすだけの安っぽいショック場面にはホトホト困ったもんです。「びっくり」と「怖い」は別物だからね。この監督全くわかってないよ。悪魔祓いの最中暴れだす馬はハリウッド版『リング』のパクリと見た(『リング』のあの場面はシュールで印象的な場面だったな)。悪魔に憑かれるなんとかいう新人女優がただただブサイクなだけでキツイのもマイナス。トム・ウィルキンソンやローラ・リニーなど才能ある俳優たちも生殺し。


■子供向け映画初体験

『超劇場版 ケロロ軍曹』
『まじめにふまじめ かいけつゾロリ』

 小学生時代、街の映画館に「東映まんがまつり」や「東宝チャンピオンまつり」が来る頃になると、校門の前でおじさんが割り引き券を配っていたものだ。テレビっ子だった小生には「アニメや特撮モノはテレビで見るもの」という、まあそんなポリシーめいたものが漠然とあったし、親もそんなものを見に連れて行く気など無かったようで、だから小生の映画館初体験は『ジョーズ』まで待たねばならなかった。ここ10年くらいの「劇場版クレヨンしんちゃんシリーズ」は後日テレビやビデオで見て「ああ、大人が見ても面白いんだな」とは思ったが、さすがに映画館に見に行くことは無かった。
 テレビ東京で放映中の『ケロロ軍曹』は「21世紀版『うる星やつら』」とでも言うべきSFアニメ。『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』をリアルタイムで見ている我々世代(つまりオタク第1世代)の琴線に触れるようなネタやギャグが満載。毎週楽しみに見ている。そんな「ケロロ」が映画になったと来れば見ないわけにはいかぬ・・・・ぬぬぬぬ・・・・よっしゃあ!子供向けアニメ映画劇場初体験だあっ!

 お・・・面白かったあっ!子供たちも少なく静かで見やすかったぞ!『ゾロリ』は山寺宏一の声優芸を堪能出来たしね!でもまあ・・・・テレビと同じなんだね・・・・。押井守や大友克洋や今敏や宮崎とかと違うのね。ま、いいんだけどね。


■アム・アイ・ア・ブロークバッカー?

『ブロークバック・マウンテン』

 15年ほど前、ビデオで初めて『ライトスタッフ』を見た時のことを忘れない。
 主人公チャック・イェガーを演じるサム・シェパードに目が釘付けだった。
 なんという美しい男だろう。寡黙で気骨があり力強い、まるで西部劇のヒーローのような男。ガムを噛み、鼻にかかった声で話し、涼しげな目で静かに笑う男。彼の出演シーンになるととにかくウットリした。
 当時好きだったジェニファー・コネリーや飯島直子(あ、今も好きですけど)が一瞬で霞んだ。彼女たちに一晩お相手してもらえるよりも、サム・シェパードが駆る馬の後ろに乗り、夜、バーボンのビンを回し飲みしながら焚き火の側で静かに語り合う方を迷わず選ぶ。
 あれはもう完全に恋だった。

 だからね、肉体関係というのはムリだけど、「男が男に惚れる」のはよく判ります。思えば小学生の時にブルース・リーが眩しく見えたのもそういうことなのだ。
 イイ女が出てない映画はOKだが、イイ男が出てない映画は見る価値が無い(byおれ)。

 4年ぶりに再会を約束し、訪ねて来るジェイク・ギレンホールを待つ間のヒース・レジャーの演技が素晴らしい。テーブルの上に並ぶビールの空き瓶、そして車が入って来る音に玄関を跳び出すH・レジャー。熱い抱擁とキス。見ていてこちらの胸も熱くなり、思わず泣けてきた。
 美しく厳しい山々の中で自然に結ばれた男たち。彼らが本当に彼らでいられるのは山にいる時だけだ。山を下りれば、ささやかでくだらない幸福に埋没して生きて行くしかない。当然悲劇に終わるしかないこの物語だが、そのピリオドがドラマティックに打たれることはない。あれほどまでに静謐な幕引き。だからこそ悲痛だ。「愛の理想と現実」の間でもがき苦しむ男たちは無様だが美しかった。


■日本映画、どう?

『メゾン・ド・ヒミコ』
『空中庭園』

 随分客入ってたな、新文芸坐。確かに話題になったこの2作品。両方とも「家族ごっこモノ」だ。
 『メゾン・ド・ヒミコ』は、「愛とは」「家族とは」といった人生のテーマを「老いと死」から見つめた作品。「ホモの老人ホーム」という演劇的空間で展開するリアルな茶番劇の中に放り込まれるのが柴崎コウというのが果たして良いキャスティングと言えるかどうか最後まで疑問。オダギリジョーは素晴らしい。この人はどんどん巧くなってるな。
 『空中庭園』は、1983年の『家族ゲーム』からこの手の家族モノがちっとも進歩してないと言わざるを得ない出来。つうかこれ原作モノか。つまんねー話だ。こんなのが文学かよ。少女漫画の方がよっぽど進んでるだろ。小泉今日子の言う「お前、死ねよ」よりも、阪本順治作品『ぼくんち』で観月ありさが叫んだ「そんなもんアタシのおまんこでいくらでも弁償してやらあ!」の方が衝撃だったし。


■動体視力ってもんを考えろ!

『ナイト・ウォッチ』

 カット割りが細か過ぎて何が起きてるのか理解不能な場面や、チャカチャカ高速で動いたと思ったら急にスローモーションになるという例のあの描写に加えて、へ〜んなオーバーラップや意味不明のフラッシュバックがてんこ盛り。とにかく疲れたのなんの。あと10分長かったら頭痛がしてたよ。この世界で暗躍する2大勢力の戦いなんてテーマ、もうゲップが出ます。ロシア製だからと妙な期待をしてみたものの、映像も話も目新しいものは一切ナシ。イイ男もエロいコスチュームの女も全く出て来ない、華が無いにもほどがある登場人物たち。
 『インタビュー・ウィズ・バンパイア』か『アンダーワールド』でも見て口直ししたいわい。


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