DRESSED TO KILL
『殺しのドレス』(1980年)

1980. US 1 Sheet. 27X41inch. Rolled.

■セックス・シンボル

 「Dressed to kill」とは、「異性の目を引くために派手に着飾る」という意味の慣用句。この映画でいう「kill」はもちろん「(男を)落とす」と、文字通り「殺す」のダブル・ミーニングだが、『殺しのドレス』という邦題は決して悪くない。なんてことは、まあどうでもいい。
 小生はこの映画に本当に「kill」されてしまった、のだ。

 開巻早々、熟女アンジー・ディキンソンのシャワー・シーンのサービスっぷりには仰天させられ、思わずたじろいだ。続くあの有名な美術館での男漁り場面でも引きまくった。正直恐ろしかった。小生のタイプとは真逆のルックスのオバサンがあんな風に悶々としているのが痛々しく、別の意味で冷や冷やした。そしてタクシー内であんな行為に及び、帰りのエレベーターであんな最期を迎えるとは。
 だがそこで、彼女と入れ替わりに救世主のような美女が登場する。ナンシー・アレン。当時デ・パルマの妻であったアレンの美貌に、高校生だった小生は完全にノックアウトされた。

 彼女が演ずるリズは「頭のきれる」「気立てのいい」「娼婦」・・・・この三要素、男にとって理想の女ではあるまいか。そんな素敵なキャラクターを、『キャリー』でも意地悪そうなヤンキー顔が際立っていたナンシー・アレンが演じているのである。ちょっと開き気味の目にいくぶん丸い鼻、というタヌキ顔。そして薔薇の花のような唇と、そこからのぞく白い前歯。小生の好み200パーセントの美女なのである、ナンシー・アレンは。
 クライマックスで見せる下着姿(ガーターベルトは鼻血もの)やラストのシャワー・シーンでのヌードも良いが、しかしアレンのエロティシズムが炸裂するのは、地下鉄でチンピラに追い回される際のブルーのドレス姿だ。「仕事」帰りであるからして化粧もバッチリ、しかもなんとノーブラだ。足早に歩く時の胸の揺れ方がとにかく堪らない。恐怖に引き攣った美貌の下で、コツコツ歩くたびにフルフル振動する胸がサスペンスを加速して・・・・ああぁ!

 あれからもう30年以上経つわけだが、小生にとって最高のセックス・シンボルは『殺しのドレス』のナンシー・アレンだ。No.1の地位は今だ揺らいではいない。いや、むしろこの映画を再見する度にその確信は強くなる。ぜひとも映画館のスクリーンでその姿を拝みたかったものだ。悔しい。
 アレンはこの後に続くデ・パルマ作品『ミッドナイトクロス』にも出演。この作品をデ・パルマの最高傑作に推すファンが多いのは理解しているが、アレンの色香が大分薄まってしまっているのが惜しい(その分ジョン・トラボルタの名演が光るが)。
 と言うわけで、大変感情的でよこしまな理由でもって、この『殺しのドレス』がデ・パルマのベスト作品の王座から降りることは、今後絶対にない。本当にない。ありえない。

 シンプルで美しいポスターである。もちろんこんな場面は本編に無いし、この真っ赤な超ピンヒールを履いた美脚はナンシー・アレンのものではない。アレンの脚はもっと肉感的だ。骨盤から太腿にかけてのラインが、もっとこう・・・・ああぁ・・・・。