THE DUELLISTS 
 『デュエリスト/決闘者』(1977年)

1977. British Quad. 30x40 inch. Folded.

■滝本誠師が絶賛してたもので

 『エイリアン』公開後からかなり経った1982年3月に、この作品は新宿の「シネマスクエアとうきゅう」にてひっそりと公開されている。その後ビデオ化されるも、これを置くレンタル店に出会うことなく、長い間見る機会に恵まれずに来た。『レジェンド』を最後に、薄味&軽味の映画監督(最早「ヴィジュアリスト」と呼ぶのは無理だった)に成り下がって行ったリドリー・スコットへの興味・関心が無くなってしまったのも大きな原因だった。
 そして21世紀に入り、某誌において我が師=滝本誠がこの作品を絶賛されているのを読み、「こりゃいかん」と慌ててレンタル店で探し当てやっとのことで見ることが叶った。日本公開から実に20年近くかかってしまったことになる。

■三つ編みの男たち

 19世紀、ナポレオン時代のフランス〜ロシアを舞台に、2人の将校の15年に渡る因縁の決闘を描いた『デュエリスト/決闘者』。主役2人を演じるのはキース・キャラダインとハーヴェイ・カイテル。風変わりな三つ編みヘアを振り乱して剣で戦う姿が「騎士道の気品」など吹き飛ばしているどころではなく、なんともエキセントリックかつヴァイオレントで痺れる。
 衣装や調度品など美術部門の細部へのこだわりと、光線と陰影を巧みに操った撮影という、スコットの(初期作品の)持ち味がこの長編デビュー作で完全に花開いているのが凄い。スタンリー・キューブリックの『バリー・リンドン』を見た直後だけに、スコットはこの作品からの影響を明言しているが、どうしてどうして互角に渡り合えるほどの仕事振りに魅せられる。
 ロケ地スコットランドの大自然やフランスの古都の町並み、そしてクライマックスでの決闘の舞台となる古城など、優れた撮影技術が切り取ったヨーロピアンなパノラマにウットリだが、スコットの真骨頂はやはり屋内場面であろう。窓から強い光を取り入れ、照らされて霞がかった濃密な空気が画面に充満する。まるで1枚の絵画のような場面に何度も溜息を搾り取られた。リドリー・スコットは王立美術院で学んだものを、動くフィルムに固着してみせたのだ。
 エモーションとエレガンスがせめぎ合い、「騎士道」とやらが時に滑稽にすら見える、決闘者たちの連綿と続く営み。そしてそれを取り囲む厳しくも美しい風景。ラストシーンで長い決闘の末に生き残った者が見つめるもの。

 後にDVDの高画質映像で見直すものの、やはり映画館のスクリーンで見なかったことが心底悔やまれた作品。

 2色刷りのシンプルなポスター。リドリー・スコット唯一の母国映画ゆえイギリス版を購入した。劇中、この決闘場面が最も激しかった。剣が石壁に当たって散らす火花。美しすぎる。