「メタフレッシュ・ゲームポッド」

 アンテナ・リサーチ社が開発したゲーム機。両生類の有精卵を培養して製造したもの。背中に開けた穴(「バイオポート」)から脊椎に直接ジャックインすることでゲームソフト「イグジステンズ」をプレイ出来る。こんな気味の悪いオブジェをゲーム機と言ってしまうところにクローネンバーグ哲学がある。
 ゴムのような皮膚のような材質。吸い付くような感触。物凄く柔らかく、簡単に変形しそうなくらい。裏側は破けていて機械(アニマトロニクス)を仕込んで動かしたらしい。アンビコードが付属してないのがなんとも残念。





「パーキー・パッツ」の紙コップ

 ジェニファー・ジェイソン・リーとジュード・ロウがモーテルで食べているファストフード「パーキー・パッツ」。出典はフィリップ・K・ディックの短編小説『パーキー・パットの日々』。シミュレーション・ゲームに興じる近未来人の話だ。
 この紙コップは、80年代に『トータル・リコール』のメガホンを採る企画が流れてしまった遺恨の具現化だ。



「ダルシー・ネイダーの店」

 ゲームソフト「イグジステンズ」内に現れたゲームショップには様々なゲーム機、ソフト、周辺機器が溢れていた。チラッとしか映らないものの、その造り込みは凄まじく現場スタッフの職人魂には感服する。
 いずれも巷に溢れている玩具や小物にちょいと細工を施し、いかにもそれっぽいパッケージに入れたもの。劇中ジェニファー・ジェイソン・リーが提げていたバッグがスキーブーツだったように、普段見慣れたモノも視点を変えれば全く違うオブジェに早変わりする。上記のメタフレッシュ・ゲームポッド同様、クローネンバーグが「これはゲーム機である」と言えばそれはそうなってしまうのである。







「マイクロポッド」

 「コーティカル・システマティクス社」製品。付属の潤滑剤をバイオポートに塗布後マイクロポッド本体を当てると縮小、体内に吸い込まれプレイ出来る。
 驚くべき造り込みがなされたプロップである。メタフレッシュ・ゲームポッド同様大変柔らかい材質のマイクロポッドは、表面に血管のようなものまで透けて見え、「メタ・リューブ XE−60」なる潤滑スティックと共にブリスター・パックされている。裏面には使用法の説明が細かに書かれ、まるでホンモノのソフトのようだ。
 ここにあるプロップは全て『イグジステンズ』のセット・デコレーターを務めた某氏から購入したものである。彼によれば、この「マイクロポッド」は4個制作されたうちの1つだという。