GHOST IN THE SHELL
『攻殻機動隊』(1995年)

1995. French. 40X54cm. Folded.

■人間とは何か

 ハリウッドのクリエイターたちに強大な影響力を持ち、『AKIRA』と並んでジャパニメーションのアイコンとなった90年代アニメの記念碑的作品。
 80年代に興ったムーヴメント「サイバーパンク」の映像化に初めて成功した作品ではなかろうか。彼のムーヴメントに影響を与えた『ブレードランナー』(しかしこの作品には「サイバースペース」の概念は登場しない。むしろアナログな世界観だ)と同じく、『攻殻機動隊』の根幹にあるテーマもまた「人間とは何か」というのが興味深い。
 脳以外をほとんど機械化した美しい女サイボーグと、電脳の海から生まれた故に実体を持たない<生命体>の恋。『機動警察パトレイバー劇場版』シリーズで都市論を展開した押井守だが、今作では、肉体への執着を過激なまでに断ち切ることで「人間を人間たらしめているものは何か」という問いをラディカルに突きつける。
 そしてこの作品から生まれた『マトリックス』もまた人間性への考察を見せる。なんの因果か。
 この後アニメーションは急速にデジタル化が進む。アナログ・アニメ時代の末尾を飾る意味でもモニュメンタルな作品。