■中国のベルトルッチ
実は初めて見たチャン・イーモウ作品はこの『菊豆』である。
片田舎の旧い染物屋を舞台に、サディスティックな年老いた夫の目を盗んで使用人である彼の甥と関係を持つ若く美しい妻=菊豆。演ずるコン・リーの色香がなんとも凄い。性愛行為のメタファとして登場する、染色機械のダイナミックなムーヴメントと、天高く屹立する物干し。そして、悲劇の終盤で燃え上がる布・・・・圧倒的な映像美、中国映画とは思えない官能性とパッションにはベルナルド・ベルトルッチや大島渚を想起せずにはいられなかったものである。撮影監督の出身だけあって、映像センスと色彩の計算には並外れた才能を発揮している。
赤と紫が鮮烈なUS版。いわゆる「女性映画」として売りたかったかのようなデザインだが、配給はあの悪名高きMIRAMAX。一体どれほどアメリカ向けに再編集されてしまったんだろうか。
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