LOGAN'S RUN
『2300年未来への旅』(1976年)

1976. International 1 Sheet. 27X41inch. Rolled.





■若葉のころ

 『美しき冒険旅行』から6年、美しく成長したジェニー・アガターがマイケル・ヨークと共演し(何故主演に2人ともイギリス人俳優を起用したのか?)、『2001年宇宙の旅』を作ったあのMGM映画が再び贈るSF超大作!・・・・のはずだったのであろうが・・・・。
 ライフ・スタイルや恋愛ばかりか、人間の寿命までがコンピュータ管理された遥か未来のドーム型ユートピアで、外界への御法度の旅に出た男女が、やがて本来の人間性に目覚めるという、とことん新鮮味に欠けるストーリーに出来の悪いSFXとダサダサな衣装が加わって、なんともマニアックな作品に仕上がってしまった。

 このイラストレーションを描いたのは、SFやファンタジーのペーパーバックの表紙で活躍していたCharles Moll。チューブのようなタイトル・ロゴと言い、チープなイラストと言い、ファラ・フォーセットの御尊顔と言い、これでもかと言わんばかりに70年代テイストが炸裂している。今見ると、ではなく、77年当時(日本公開年。なんとテアトル東京で上映された)でさえも、このイラストのルックは「イタかった」と記憶している。

 チャイコフスキー「ピアノ協奏曲」を換骨奪胎したようなジェリー・ゴールドスミス作曲による「愛のテーマ」は、まだ邦題が決まる前、早々にシングル発売され(タイトルは「ローガンズ・ラン 愛のテーマ」だった)、配給側はこのSF超大作を売る気満々だった。時に『スター・ウォーズ』前夜であった。
 友達が買ったこのシングル盤を聴かせてもらった僕は、ゴールドスミスによる得も言われぬロマンティックな旋律に、見事なオーケストレーションに、子供のくせしてして酔いに酔った。クラスメイトの大半は、歌謡曲や、アニメや特撮ものの主題歌なんぞにまだまだうつつを抜かしていて良い年頃だ。僕は、実にマセていたのだ。
 だから、背伸びをして映画の世界を覗き見た時の興奮と、思春期だった頃の甘酸っぱい思い出が、この曲には封じ込められている。「ローガンズ・ラン 愛のテーマ」は、今でも僕にとって大事なタイムカプセルだ。

 曲の美しさばかりに心を奪われ、ロードショー公開時にはこの映画を見逃している。映画そのものはすでにどうでもよくなっていたのかも知れない。後年、TV放映されたのを見て、あまりの腑抜けぶりに驚いたものだ。

 それでも、そんなクソ映画でも、僕にとっては特別な一本だ。ジェニー・アガターの不思議な美貌と、ジェリー・ゴールドスミスのサントラのおかげで。