MULHOLLAND DRIVE
『マルホランド・ドライブ』(2002年)


2002. US 1 Sheet. 27X40inch. Double-sided. Rolled.

■この映画の正しい見方

 小生は最初にこの作品を見た時、疲労と寝不足のせいであろう、ほぼ全篇に渡って約5分に1度睡魔に襲われ続けた。

<MTVのようなシュールなダンス映像。>
<マルホランド通りで殺されそうになるエロい女。>
<衝突事故によって危機を逃れサンセット大通りまでフラフラ歩いて来るエロい女。>
<事件現場に来てロスの夜景を前に佇むロバート・フォスター。>
<夢いっぱいでハリウッドへやって来る希望に満ちた女優の卵。>
<機内で知り合ったと思しきやたらと明るい老夫婦。>
<叔母の家に不法侵入していたエロい女を見つけるが動揺を見せない女優の卵。>
<エスプレッソを吐くプロデューサーに、彼と揉めてゴルフクラブをぶん回す映画監督。>
<ダイナーの駐車場裏で真っ黒なホームレスに出くわし、ショック死する面白い顔の男。>
<何人もが巻き添えになるドタバタ調の発砲事件。>
<記憶喪失になっていたエロい女を助けようと奔走する女優の卵。>
<ジジイどもに囲まれて異様な熱演を見せる女優の卵のオーディション風景。>
<エロい女のわずかな記憶を頼りに探し当てた家で、なんと横たわる女の腐乱死体を発見。>
<ベッドで愛し合うエロい女とエロい女優の卵。>
<夜中に目覚めてオペラ劇場のような建物に行く2人。>
<気味の悪いMCと、歌っていて突然気絶する女性歌手。>
<青い箱に青いカギを差し込む。>
<すると記憶喪失だった謎のエロい女はあのすぐキレる映画監督の婚約者になっていて、明るく希望に満ちていた女優の卵のほうはエロい女とのレズ関係が破局し、精神的にもやばい状態になっていて、とても同じ女性とは思えぬほどくたびれ果てている。>
<撮影現場でもパーティーでも嫉妬に苛まれ、笑い者になり果てる女優の卵。>
<ダイナーの駐車場裏の真っ黒いホームレスが何故か青い箱を持ってる。>
<それを紙袋に入れてポトリと落とすと、そこから虫のように小さいじいさんとばあさん(冒頭で女優の卵と一緒にロスに来た夫婦だ、こいつら)がケラケラ笑いながら出て来る。>
<でもって暗い家の中で青いカギを見つめている女優の卵のところに現れる小さいじじいとばばあ。>
<突然大きくなって女優の卵を追い回し、結局彼女は拳銃で自殺する。>
<ロスの夜景にオーバーラップする、エロい女と女優の卵の幸せそうな顔。>
<唐突に現れたケバい化粧のばばあが「お静かに」と言って幕を閉じる。>

 とまあ、5分に1度うつらうつらしながら見たもんだから話がとんと繋がらない。
 ZZZZ・・・・ん?あの場面のあいつは一体どうなったんだ?・・・・ZZZZ・・・・ん?誰だこいつ?・・・・ZZZZ・・・・ん?どこだ?ここ。・・・・ZZZZ・・・・なんでそーなっちゃうんだよっ・・・・ZZZZ・・・・えっ?嘘だろ?・・・・ZZZZ・・・・おいおいこれで終わりかよ。ん?誰だ?このババア。
 あー、もう居眠りしたおかげでワケわかんねーよっ、まったく。仕方ねー、もう1回見っか。
 2回目は一睡もすることなく最後まで集中して見る事が出来た。
 しかし驚いたことに、夢うつつで見た1回目と全く同じ感想だったのだ。
 も〜!やったなあ〜!リンチィ〜!



2002. British Quad. 30X40inch. Rolled.

■「A work of genius」

 そんなステキな鑑賞の仕方をしてしまった『マルホランド・ドライブ』。だがもしかすると夢うつつで見る事こそこの作品の正しい鑑賞法かも知れない(と思いたい)。パンフレットにある柳下毅一郎氏のテキストが正論だと思う。語れば語るほど作品の本質から遠ざかってしまう映画。
 「理解出来なくてもいい」「なんだかワケわかんないけどゾクゾクする」・・・・こんな映画を作っていいのは世界中でデイヴィッド・リンチだけだ。その理由はこのイギリス版ポスターに書いてある。「A work of genius(天才の作品)」と。

 よーし、次回作も居眠りしながら見るぜ!