Design for 1st French release. 40 x 54 cm.


『気狂いピエロ』はフランスのジョルジュ・ド・ボールガールとイタリアのディノ・デ・ラウレンティス、欧州映画界を代表する2人の大プロデューサーによって製作された仏伊合作映画である。
予算は推定30万ドル(現在の貨幣価値に換算すると約250万ドル)で、ゴダールが2年前に撮った『軽蔑』の3分の1にあたる。
1965年8月のヴェネツィア映画祭に出品された後、同年11月5日にフランスで、その翌月には西ドイツ(当時)で、そして1966年1月にイタリアで公開された。フランスでの興行は3週間、パリでの動員観客数は約60万人で、フランス全土では約131万人を動員した。
ポスターのデザイナーは不明。70年代のものとも80年代のものとも言われるこの再公開版ポスターでも初公開と同じデザインが使用された。



1991. French re-release. 40 x 53 cm.


推定1991年(2000年代説もあり)に再公開された際に制作されたポスター。フェルディナンの死をコミック風に見せるデザインが秀逸。デザイナーは不明。初公開版にはなかったジャン=ピエール・レオー、サミュエル・フラーのクレジットのほか、当時名物だった気狂い婆さん「亡命王女アイシャ・アバディ」までもが名前を連ねている。
このレイアウトが見せる3段階のリズムはこの映画そのものと言える。カットからカットへの跳躍がもたらすスピード感。生き急ぐかのように駆け抜けるフェルディナンとマリアンヌの冒険物語。そして「息切れ」(『勝手にしやがれ』の原題)したフェルディナンに訪れるあっけなく滑稽な死。作品の本質を突いたポスターが初公開から四半世紀を経て誕生した。



2018. Official poster for Cannes Film Festival.


Georges Pierreによって撮影された『気狂いピエロ』を象徴するスティルが、若手グラフィック・デザイナー&イラストレイターFlore Maquinの手で鮮やかに蘇った。
この年のエイプリル・フール(いや、フランス風に「四月の魚」と言うべきか)の日のこと、ツイッターに「現在87歳のジャン=リュック・ゴダールが4年ぶりとなる新作の製作を発表。主演はジャン=ポール・ベルモンド(84歳)とアンナ・カリーナ(77歳)。タイトルその他は未定」と書き込んだところ、一般ユーザーだけでなく日本の映画関係者までもが真に受けるという珍事があった。実はカンヌ映画祭にゴダールが新作を持ち込むという事前情報があり、それがもしや、ということだったらしい。しかし、そんな事情も知らずにホラを吹いた筆者が腰を抜かすほど驚いたのは、この年のオフィシャル・ポスターが発表になった瞬間だった。