1990. French. 42X56cm. Folded.

「僕が言いたかったのは・・・・なぜ・・・・」とつぶやくフェルディナン。
そして青い顔に黄色いダイナマイトを、その上からさらに赤いダイナマイトを巻く。
導火線に火を点けたものの、「おれはバカだ。こんな死が!」と思い直し、消そうとするが爆発。
アルチュール・ランボーの詩「地獄の季節」の一節がマリアンヌとフェルディナンによって朗読され
海と空が完全に溶け合った後、絶妙のタイミングでアントワーヌ・デュアメル作曲
「一生愛するとは言わなかった」の間奏部分が軽やかに流れ出す。
有楽シネマの場内が明るくなった時、僕はもう2時間前までの僕ではなかった。

■「気」「狂い」「ピエロ」

 上に掲載したフランスでのリヴァイヴァル版ポスターを見た時、小笠原デザイン以外でこれほどまでに「らしい」デザインに驚き、非常に興奮した。
 ピエロ=フェルディナンがダイナマイトで自爆するプロセスを三段階で見せ、それぞれに「PIERROT」「LE」「FOU」とタイトルをバラして割り振るというデザインがコミックのようなリズム感を生む。自殺を連続した画で見せるという残酷さに、ちょっとタブーの匂いさえ漂う。写真と写真の間にクレジットを配置したのもクールだ。

 このポスターにある三段階のリズムこそが、この映画そのものだ。「青い顔」「黄色いダイナマイト」「爆炎」・・・・このように『気狂いピエロ』全篇にみなぎっていたのは、カットからカットへの跳躍とそこから生まれるスピード感、そしてそのスピード感がもたらす主人公の、生き急いだ、取り返しの付かない人生の悲喜劇だった。この作品の本質をあまりにも見事に突いたデザインが初公開から25年後に誕生した。
 また初公開時のポスターには無かった細かいクレジットも興味深い。チョイ役のジャン=ピエール・レオーやサミュエル・フラーばかりか、当時名物だった気狂いバアさん「王女アイシャ・アバディ」までもが名前を連ねている。やはり最高だ。



70s. French.
42X56cm. Folded.

初公開版と同じデザインを採用したリヴァイヴァル版。
小笠原デザインの後では、使われてる写真もタイトル・ロゴもピンと来なかった。
原題「Pierrot Le Fou」を英訳すると「Pierrot The Crazy」。