SHAOLIN SOCCER
『少林サッカー』(2001年)


2001. Hong Kong. 26X38 inch. Rolled.

■10年に1本の作品

 香港で長年「喜劇王」として君臨して来たチャウ・シンチー(周星馳)入魂の一作。
 かつて少林拳を体得するも現在は落ちこぼれて社会の底辺で暮らす男たちが、サッカーによって少林拳をアピールしようと一念発起、超絶的なプレイでのし上がって行く姿を、怒涛のナンセンスギャグをかましながら脱線しつつも熱く描く、史上最強のアクション・コメディである。
 今まで話術が中心のお笑いを得意として来たシンチーだが、今回は体を張ったフィジカルな笑いが炸裂。鍛え上げた肉体と精悍な顔にこの作品への並々ならぬ意気込みが窺える。香港映画のお家芸であるワイヤー・アクションと最新のVFXが可能にした今まで見たこともない少林拳プレイの数々が、笑いをとりながらも美しく決まる場面に驚嘆。「んなバカな」とツッこみつつも歓声を上げてしまう。
 そして、画面上で行われているシュールでマンガのような試合を、パワフルで勇壮な音楽が過剰に盛り上げ、バカも真剣にやればかっこいいことを思い知らされるのだ。日本のコミック(つまり『キャプテン翼』)からの影響がモロだが、ここまでのエンターテインメントに作り得たのはまぎれもなく香港映画人の才能であり、ハリウッドには到底無理である。
 このハードルはもしかしてシンチー自身にさえ越えられないのでは、と思わせるほどの超傑作。と言うか10年に1本の作品。

 んなわけで香港版ポスターを初めて購入した。紙質も印刷の精度も非常に良い。



2001. Hong Kong. 26X38 inch. Rolled.

■子供の時に見なくてよかった

 シンチーが心酔してやまないブルース・リーの『ドラゴン危機一発』のポスターを真似たと言われている横版ポスター。シンチーのポーズとタイトル・ロゴが確かにそっくりだ。上の縦型よりもこちらのほうがレア。それにこちらのほうがかっこいい。だがシンチーが似てない。どうやらこれ、シンチーではないらしい(笑)。

 2002年、小生を最も熱狂させた作品。『燃えよドラゴン』以来の傑作と言ったら褒め過ぎになるだろうか。オープニングのアニメとテーマ曲(これもブルース・リー映画のパロディ)からしてワシ掴みにされた。この映画を見たのが少年期でなくてよかったと心底思う。感化され易い年頃のことだ。「サッカー」と「少林拳」、どちらを選んでもきっと人生狂ってた。



2004. US 1 Sheet. 27X40inch. Double-sided. Rolled.

■スティーブン・チョウ・ゴーズ・トゥ・アメリカ

 香港公開から3年、2004年4月『少林サッカー』はやっとのことでアメリカ公開されることになった。MIRAMAXが2002年(多分)に買い付けたはずだが、案の定20分以上もカットされ、セリフも英語に吹き替えられ、テーマ曲もHip Hopに差し替えられたらしい。恐ろしいことだ。
 しかも挙句の果てにいつまで経っても公開日が決まらない。このポスターの下のほうには「COMING TO THEATERS THIS AUGUST」とあるが、これは2003年の8月のことである。
 こうして香港の喜劇王のアメリカ進出は失敗、チャウ・シンチーが「第二のジャッキー・チェン」になることは無くなってしまった。とは言っても、ビデオ・DVDソフトのおかげでアメリカのオタクの間では「STEPHEN CHOW」として既に認知されているシンチー。ハンサムとは言い切れない顔、時折死ぬ眼差し、貧弱な肉体、早口な話芸、シュールな笑い、童貞力の高いセンス・・・・ジャッキーにないものがこんなに沢山あるのに。あ、つうかこれじゃ売れないか、アメリカでは。


2004. British Quad. 30X40 inch. Rolled.

■スティーブン・チョウ・ゴーズ・トゥ・UK

 サッカー王国イギリスで何故こんなに公開が遅れてしまったのか謎である。香港との結びつきはいまだに強いはずであるし、何と言っても優れたアジア映画を評価・紹介することにかけては先進的であるはずのイギリスが、サッカーを題材にしたエンターテインメント作品を輸入するのに3年も遅れをとったのが全く解せない。

 だが満を持して(?)登場したUK版ポスターは素晴らしいデザインである。香港版オリジナルよりも『少林サッカー』らしさを感じさせる。最大のポイントは「少林チーム」と「魔鬼チーム」を小さいながらも勢揃いさせたことであろう(ただし各々の顔が判別できないほどピントのあまい写真を使用しているのが残念)。しかもちゃんとスタジアムで、だ。「少林足球」というオリジナル・タイトルもちゃんと入っている。これをベストポスターと言いたいところだ。
 ただ惜しいのは全体的にエッジが甘く寝ぼけた印象が否めないところ。香港版を見習って欲しいよ。