SKY RIDERS
『スカイ・ライダーズ』(1976年)

1976. British Quad. 30X40 inch. Folded



横型を活かして主要登場人物とアクションの舞台をうまく収めた英国版。
タイトル・ロゴの「k」にハング・グライダーのシェイプを合わせたデザインが見事。

■世界遺産でダイナマイト

 小学5年生の時、小生は『オーメン』の併映としてこの映画を見た。当時オカルト映画よりもパニック映画やアクション物の方が断然好みだった小生は、力関係で言えば『オーメン』のオマケのように上映されたこの『スカイ・ライダーズ』の方にむしろ夢中だった。

 舞台はギリシャ、アメリカ人の実業家(TVシリーズ「アメリカン・ヒーロー」のロバート・カルプ)が妻と子供2人をテロリストに誘拐される。要求は身代金ではなく大量の銃火器と弾薬。現地の警察(演じるはなぜかフランス人のシャルル・アズナヴール)は通り一遍の捜査のみでお約束の無能ぶり。
 そこへ新聞記事を見たと言ってフラリと現れたシワくちゃ猿顔のナイス・ガイ、しかも金持ちの風来坊(おいおい)ジェームズ・コバーン。酒類の密輸なんぞで生計を立てているが、どうやら被害者の実業家とは旧知の仲らしい。つうか、誘拐された実業家の妻、実はコバーンの前妻、しかも上の子はコバーンの息子だったことが判明する。現地警察のやり方に業を煮やしたコバーンは、持ち前のコネクションを使って独自の捜査を始めることに。
 犯人から届いた人質写真を考古学研究家のダチに見せて場所を特定するコバーン。なんとそこは特異な地形のメテオラ山岳地帯にはるか昔建立されたロッサノ修道院だった。自然が造成した要塞とも言うべき修道院に人質を抱えて立てこもったテロリストたち。下から行けばヤツらから丸見えだ。偵察に出向いたコバーンの頭上で優雅に旋回する鷲(もしくは鷹か?)。こ、これだ・・・・コバーンのニカッと大きく笑った唇からのぞく歯があまりにも白くて眩し過ぎる。
 ついに、ここでハング・グライダーの登場だ。海岸でハング・グライダーによる見事なアクロバット・ショーを披露しているチームに救出作戦をもちかけ、コバーンは早速飛行訓練開始する。そしてテロリストたちが付きつけたタイム・リミットが迫る中、黒塗りのハング・グライダー数機を武器に、救出作戦の火蓋が切って落とされたっ!

 当時世界的に流行していたハング・グライダーから逆算して組み立てたストーリーの割りには、かなり良く出来ている。やはり当時花盛りだった国際テロリズムをからめた筋立てが無理なく機能しているからだろう。
 愛した女の危機を前に新旧の夫同志が協力し合う、というバディ感が、コバーンとカルプ2人のシブいたたずまいからあふれ出る。テロリストのアジトで再会を束の間喜ぶ元夫婦の姿や、自分の顔を憶えてない息子へのコバーンの悲哀などを、サスペンスの真っ只中でサラリと見せる憎い演出もある。
 ハング・グライダー・チームのリーダーを演じるのは、口髭がセクシーなジョン・ベック。前年の『ローラーボール』でのタフガイっぷりを見込まれてか。そして彼の部下の1人に扮したスティーヴン・キーツもこの頃はご活躍だった。テロリスト映画の名作『ブラック・サンデー』でカバコフ大佐の部下モシェフスキーを印象深く演じたのは彼だ。

 この手のアクション映画のご多分にもれず、もちろんツッ込みどころだって多々ある。テロリストの素性もよく判らないし、ギリシャが舞台なのに主要な登場人物は外国人ばかり、テロリストの隠れ家になるほどメテオラはマイナーな場所なのか疑問だし、単なるハング・グライダー乗りの青年たちがいきなりマシンガンを扱えるのもどうかと思う。急襲する時はハング・グライダーでもいいが、逃げる時にもそんなものを使ったら狙い撃ちされまくりだろう。

 しかしそんな疑問を全て蹴散らすのが、ジェームズ・コバーンの男臭い魅力なのである。
 80年代には「Speak LARK」と渋い声で言い放つ一連のCMで有名だったコバーン。とにかく彼が白い歯を見せてニヤリと笑うだけで、カッコよくて腰が抜けそうになる。敵のヘリコプターのランディング・ギアにしがみついた状態で飛び続ける、というド迫力のアクション・シークェンスを、なんとスタント無しで演じる、という役者魂まで披露するコバーン。自分がホモではないかと疑うほど『スカイ・ライダーズ』のコバーンには惚れ惚れする。「こんなのムリあんだろっ・・・むむ・・・でもコバーンが出てるからオッケー!」なのだ。DVD化の際は是非とも小林清志による吹き替えを収録して頂きたかった。

 と言うわけで、この映画はカッコいいジェームズ・コバーンが白い歯をムキ出しているUK版で決まり!
 ちなみにメテオラの修道院、ダイナマイトで爆破されたりしちゃってるが(ポスター画像参照)、現在は「世界遺産」に登録されてますので。