STOP MAKING SENSE
『ストップ・メイキング・センス』(1984年)

1984. US 1 Sheet. 27X41inch. Rolled.

■音楽とはなにか?

 70年代後半から80年代にかけて先鋭的な音作りで当時最高に「トンガってた」バンド、トーキング・ヘッズ。バンドの最盛期に敢行された『SPEAKING IN TONGUES TOUR』のライヴ・ステージを完璧な形で収めたのがこの作品である。

 アート志向でインテリ層にもてはやされていた「頭でっかち」のバンドという先入観がヘッズには付きまとっていたが、ここに展開するのは「STOP MAKING SENSE」(意味づけをやめよ)というタイトル通りに、思考することをやめてひたすら躍動するステージングだ。サポート・メンバー全員が黒人というファンク志向全開のパフォーマンスと、アスリートのごとく肉体を酷使する痩身のデヴィッド・バーン。トーキング・ヘッズというバンドがこれほどまでにフィジカルだったとは。
 シャーマニックなバーンの歌声とアクション。高い演奏テクニックとメンバー間のぴたり合った呼吸が生み出すグルーヴの恍惚。計算し尽くされた舞台設計と他のカメラが一切映らない魔法のような撮影。
 これは単なるコンサート・フィルムではない。「ホームドラマ」「ホラー」「アクション」「コメディ」「ラヴストーリー」の要素を散りばめた1本の劇映画であり、そして「音楽とはなにか?」「人は何故音楽をやるのか?」という根源的かつ普遍的な疑問に対する答えを内包した「聖典」である。

 監督は『羊たちの沈黙』でブレイクする前のジョナサン・デミ。撮影は『ブレードランナー』のジョーダン・クローネンウェス。タイトル・ロゴは『博士の異常な愛情』のパブロ・フェッロ。80年代を代表するカルト作品の1本。