WINGS OF HONNEAMISE 
『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(1987年)

90s(?). British Quad. 30X40inch. Rolled.

■森本レオのものまねは早かったです

 90年代半ばに社会現象にまでなったTVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を制作したGAINAX。その第一回劇場長編アニメ映画である。
 当時20歳代の若いスタッフが商業主義に毒されることなく精魂込めて丹念に創り上げたこの作品は、あの時点での到達点であるばかりか、未だに輝きを失わない名作である。
 過去とも未来ともつかない架空の国家を舞台に、落ちこぼれの巣窟であった宇宙軍が最初の有人人工衛星を打ち上げるまでの群像劇を、驚くほど緻密な美術と情感豊かな演出で描く。
 主人公シロツグの声を担当した森本レオの脱力っぷりがこの作品の決定打ではあるが、坂本龍一によるノスタルジックで、リリカルな、格調高い音楽が時間的・空間的な深みをもたらし、ラストでは『戦場のメリークリスマス』同様に絶妙のタイミングで鳴り響くテーマ曲が見る者の涙を搾り取る。
 優れたSF映画であると同時に「青春映画」の傑作でもある『オネアミスの翼』。所謂「ジャパニメーション」ブームには早過ぎた。今こそ世界的に再評価されるべき作品。