Original prints taken by Angelo Novi in 1970.

ここにあるスティル(スチール)を撮影したのはAngelo Novi。
『暗殺の森』を皮切りに、『ラストタンゴ・イン・パリ』、『1900年』、『ラストエンペラー』、『シェルタリング・スカイ』と
ベルトルッチの黄金時代を記録し続けたスティル・カメラマンである。
他には、ピエル・パオロ・パゾリーニ、セルジオ・レオーネなどの作品でも活躍した(2人ともベルトルッチと縁のある監督だ)。
これらの大半は、映画製作時にAngelo Noviのラボで焼かれたオリジナル・プリントであり、全てヴィンテージ・プリントである。



クランク・イン前と思しき珍しいオフショット。
ステファニア・サンドレッリがまだロングヘアである。


クアドリ教授暗殺に出発する朝のシーンから映画は始まる。
『軽蔑』のバルドーの尻へのイタリアからの回答。


パリに着くなり教授に電話するマルチェッロ。
教授のアパルトマンの電話番号は当時のゴダールと同じものだ。


靴を脱ぎ無邪気に歩幅で部屋の広さを測っているジュリア。
『女と男のいる舗道』で自分の身長を指で測っていた主人公ナナを彷彿とさせる。


皇帝アウグストゥスの碑文遺跡を擁する「アラ・パキス博物館」の外を歩くマルチェッロ。
ムッソリーニがプロパガンダの一環として建設した施設である。


伯父のアメリカ土産だというレコードをかけて踊るジュリア。
実はジョルジュ・ドルリュー作曲によるもの。


ジュリアの髪型とソリッドなデザインのワンピースに見る最先端モード。


ブラインドから差し込む光芒とイタリアン・アール・デコの華麗な調和。
『アメリカン・ジゴロ』の撮影監督ジョン・ベイリーは撮入前、ポール・シュレーダー
にこの映画を繰り返し見せ、リドリー・スコットは『ブレードランナー』で
このシーンのテクニックを引用した。


ジュリアの母親を演じたのは戦後から活躍した女優、イヴォンヌ・サンソン。
『暗殺の森』は彼女のフィルモグラフィ中最後期のものである。2003年没。


プロダクション・デザインを務めたフェルディナンド・スカルフィオッティ
の才能があふれる壮麗なショット。ストラーロ同様、重要なパートナーだ。


ドミニク・サンダは最初大臣の愛人として登場する。


マルチェッロの父が収容されている精神病院は、「EUR会議場」で撮影された。
ムッソリーニ政権下に建設された巨大なファシズム建築のひとつ。


パリ行きの列車の豪華なコンパートメント。もちろんセット。
窓外を流れる景色はスクリーン・プロセスによるもの。


ヴェンティミリアの娼館の1シーン。帽子はここで脱いだと推測される。
本編からバッサリとカットされ、現在に至るもネガもプリントも見つかっていない幻のシーン。


そしてラウル同志の執務室へと降りて行くマルチェッロ。
女たちとどんなやりとりがあったのかが気になるところだ。


机の上に転がる無数の胡桃に込められた意味は何か。
お前などこの中の1粒に過ぎない、というラウルからのメッセージか。


顔に傷を持つ気のふれた娼婦として2度目に登場するドミニク・サンダ。
後ろに見える絵画はラファエル前派の画家アルバート・ジョゼフ・ムーア作「夏の夜」。



このスティルはイタリア版ポスターにイラストで再現された。
「黒シャツ隊」の帽子をかぶるサンダに『愛の嵐』のシャーロット・ランプリングが重なる。


それにしても、サンダに一人三役を演じさせる意味とは何だったのだろうか・・・・。