DEAD RINGERS
『戦慄の絆』(1988年)


1988. US 1sheet. 27X40inch. Rolled.

■解剖とバロック

 オープニング、ハワード・ショアによる美しいバロック風テーマ曲に乗って17〜18世紀ころの医学書の挿絵であろう銅版画が真っ赤な背景に現れては消えて行く。ソウル・バス以降カイル・クーパー以前のタイトル・バックで小生にとってこれほどインパクトのあるものは他になかった。そんな風に幕を開けるこの作品は、実際に起きた双子の産婦人科医変死事件を題材にした小説『TWINS』を映画化したものである。当時最先端のSFXとジェレミー・アイアンズの演技力で「双子」のツー・ショットを完璧に映像化。派手な特殊メイクこそ登場しないが、その代わりに彼のフィルモグラフィ中最高に魅力的な造形物「畸形の子宮の為の手術器具」が、破滅に向かう双子の狂気に花を添える。この作品の基調となってる真っ赤な手術着の「血」のイメージとクロームの冷たい感触は後の『クラッシュ』に通ずるものでもあろう。
 そしてこの作品からクローネンバーグ組に入ったのが、『小さな恋のメロディ』『ロッキー・ホラー・ショー』『スターウォーズ 帝国の逆襲』などで撮影監督を務めたポーランド生まれのカメラマン、ピーター・サスシツキーである。『戦慄の絆』以降の作品に漂うある種の濃密な空気は彼の撮影の賜物であろう。
 このポスターはカナダ向けの物だが、US版に別のディストリビューターのステッカーを貼って使い回している。各国版とも基本イメージはこれ。

『戦慄の絆』アメリカ版ビデオポスターに描かれたクローネンバーグの直筆サイン

多分ホンモノ。筆跡は同じなんだけどね。ま、ホンモノってことで。