STARSHIP TROOPERS
『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年)


1998. British Quad. 30X40inch. Double-sided. Rolled.

■これ、ホントにあの『宇宙の戦士』か!?

 「パワード・スーツ(強化防護服)」に身を包み異星の生物との死闘を繰り広げる若き兵士たち・・・・・ハヤカワ文庫刊の原作にあるスタジオぬえのイラストに痺れ、『機動戦士ガンダム』をバイブルとして来たSFファンが長年待ち望んだヴィジュアルだ。
 ところが、ロバート・A・ハインラインの原作にあった、最も大きなウリである刺激的なSFガジェットを大胆に切って捨てたおかげで誕生したのは、かつてスクリーンで見たことのない大量殺戮だった。
 鋭く尖った肢で暴れまくる画面を埋め尽くさんばかりの昆虫軍団にライフル一丁で立ち向かう兵士たち・・・・足はもげ、腕は溶かされ、首はすっ飛び、胸は刺し貫かれ、胴は真っ二つに・・・・・阿鼻叫喚の地獄絵図を前に小説『宇宙の戦士』を長年崇めていたファンたちの脱力した顔が目に浮かぶようだ。

■ヴァーホーヴェン将軍に敬礼!

 そんな映画『スターシップ・トゥルーパーズ』を確信犯的に見事完成させたのは、『ロボコップ』で狂った未来観と独特のヴァイオレンス感覚を提示し、『トータル・リコール』ではあまりにも腑抜けた火星コロニーを作り出した男、ポール・ヴァーホーヴェン。
 ハリウッドにやって来る前、出身国では俳優ルトガー・ハウアー、撮影監督ヤン・デ・ボンと組んだ数々の作品で「オランダのスピルバーグ」とまで呼ばれたヒット・メーカー。本作の前、怪作『ショーガール』がゴールデン・ラズベリー賞に選ばれ授賞式に出席して自らトロフィーを受け取るというナイス・ガイとして知られている。子供の落書きのような絵コンテを描き、後から合成する昆虫の代わりに俳優たちの前で吼えて見せる姿に、天才を見た。
 声に出して言ってみよう・・・・ポール・ヴァーホーヴェン・・・・・なんと素敵な名前だ。もう一度言ってみよう・・・・ヴァーホーヴェン・・・・ココアの名前のようだ。もう一度、ヴァーホー・・・・もういいよ。

■「見ろ。驚け。そしたらまた見ろ」

 97年、『フェイス/オフ』『プライベート・ライアン』『ブギー・ナイツ』『ガタカ』といった超傑作群を寄せ付けることなく、小生のベスト・フィルム・オブ・ザ・イヤーに、そして『セブン』と並んで90年代小生を最も打ちのめした作品となった『スターシップ・トゥルーパーズ』。イイ歳こいた大人のハートに火をつけ、アクション・フィギュアやトレーディング・カードなんぞを大量にコレクションさせた罪は大きい(おいおい)。
 当然海外版ポスターは必需品であったわけだが、各国版合わせて数ある中で最も小生の心を捉えたのがこのイギリス版。地面を突き破って現れた巨大なバグを背景に絶叫する主人公ジョニー・リコを捉えた名ショット。タイトル・ロゴは2種類あるうちのクールなほうを使用している。
 右上のコピーは「見ろ。驚け。そしたらまた見ろ」・・・・小生はなんと4回も劇場に足を運んでしまった。



1997. US 1Sheet. 27X40inch. Double-sided. Rolled.

■ビバ!地獄絵図!

 出版当時「軍国主義小説」のレッテルを貼られセンセーショナルな扱いを受けた原作を、お得意の「クレイジーな未来観」でもって徹底的にカリカチュアライズし、もう笑うしかない「脳ミソ空っぽ」なナショナリズムに置き換えて映像化したヴァーホーヴェン。能書きなどはどうでもよい。見る者を圧倒するのは怒涛のSFXである。『ジュラシック・パーク』で画期的なCG恐竜を動かして見せたフィル・ティペットが『ジュラ・パー2』を蹴ってまで参加。地を這い空を翔る巨大バグ軍団に命を吹き込んでくれたおかげで、かつて見たことのない戦闘シーンが誕生した。地表を覆う何万というバグの群れは殺しても殺しても減らず、最前列では前述のような地獄絵図が繰り広げられる。あまりにもリアルな大量死のヴィジョン。ヴァーホーヴェンとティペットが見せたかったのはまさにこれだ。「パワード・スーツ」など着せるわけがない。そして戦いの場は地表だけではない。バグの惑星上空に待機する巨大戦艦の艦隊を地上の大型バグが放つプラズマ砲が直撃。真っ二つに寸断されミルフィーユのような断面をメラメラ燃やしながら、宇宙空間に乗組員たちを吐き出して轟沈する戦艦。そして猛スピードで飛ぶ脱出艇のキャノピーにぶち当たる宇宙空間に漂う死体。ヴァーホーヴェン作品で描かれるヴァイオレンスには「過剰な残虐性」に加え、常に「マヌケさ」が漂っている。

 バグの爪痕が鮮やかなポスター。熱いね〜。
 当然ながらコピーは全世界的に、「『ロボコップ』と『トータル・リコール』の監督が贈る」。
 そりゃそうだ。