1998. French. 46X62inch. Folded.

■バカでいい。どーんと死んで来い!

 ヴァーホーヴェン作品の登場人物の多くは「頭が悪そう」で「妙に濃い」キャラクターである。
 この作品でも主人公ジョニー・リコ(キャスパー・ヴァン・ディーンは『スリーピー・ホロウ』でも直情的なキャラだった)はじめ、登場人物のほぼ全員がバカっぽい。前半で描かれる学園生活やアメ・フトもどきの試合やプロム・ナイトでの主人公たちの気絶しそうな頭の緩さ。地球連邦軍に入隊してからは筋肉で脳ミソを引き締めバカに磨きがかかっていく。
 中盤以降、そんなバカどもの友情・恋愛・師弟愛・死が語られていくことになるのだが、当然ながら見ていて感情を動かされることはない。何十万という戦死者を出しながらもバグとの戦いがようやく終わり、「ニカッ」と眩しい笑顔を見せる兵士たち。本当に頭が悪そうだ。かつて戦争映画でこれほど敵・味方を平等に描いた作品があったろうか。そしてヴァーホーヴェンは人間とバグ双方に悪意だけではなく愛情をも注いでいる。

 US版にならってなのかフランス版ポスターでもこんな演出が。バグの肢がポスターを突き破っちゃってる。トリック・アートのつもりならもっと上手に描いて欲しいもんだ。しかし『ブレードランナー』でもそうだがどうしてフランス版はロゴをアレンジしちゃうのだろう。


1998. British Subway. 40X60inch. Rolled.


入隊し世界を守ろう!


敗北は絶滅を意味する!


死をとるか栄光をとるか!


2本以上足のあるやつはすべて殺せ!


新種の敵、新種の戦争!


諸君の惑星は諸君を必要としている!

■もっと情報を?

 この作品では「連邦ネットワーク」が流すニュースやプロパガンダ映像がたびたび挿入され、ストーリー展開の絶妙なスパイス兼オイルとなっている。そのどれもが監督の悪意によって過剰に危険でクレイジーな匂いを放っていて小気味いい。
 「バグ憎けりゃゴキブリまで」と言わんばかりに昆虫を踏み潰す子供たちと、それを喜ぶイッっちゃった眼をした大人のニュース映像は、怖過ぎてもはや笑えない。公開中のアメリカでは監督を「ナチ」呼ばわりする観客も多かったと聞く。
 ヴァーホーヴェンは幼少時、ナチス占領下のオランダでファシズムや戦争のなんたるかを身を以って体験しているが、そのような事実を知らずともこの映画の「第三帝国っぷり」がカリカチュアであることは一目瞭然である。この映画をナチズムとして糾弾したアメリカ人は、物凄くバカか、もしくは己がファシストである。映画のキャラクターたちと同じレベルだ。

 と言うわけで、ここにある6点(実際はもう1点あるようだ)の戦意高揚ポスターがロンドンの地下鉄駅構内を飾った素晴しい風景を想像してうっとり。
 もう最高だな。さすが『モンティ・パイソン』の国だよ。ちゃんとわかってるね。