US Video AD. 27X40inch. Rolled.

■脳を吸い取られている・・・

 主人公ジョニー・リコ、元カノ(デニース・リチャーズ)と今カノ(ディナ・メイヤー)を従えちゃってる、の図。頭悪そうなことこの上なし。ロゴもキャラクター・グッズやフィギュアで使用していた「勇ましい方」(つうかあんまりクールじゃない方)を採用。凶暴な昆虫が売りのくせにこんなんで良いのだろうかと言いたくなるビデオ版ポスター。ん?あ、いいのか、これで。

 ジョニーが所属する部隊の隊長を演じるのは、ヴァーホーヴェン作品『トータル・リコール』でも光っていたマイケル・アイアンサイド。年齢と共に幾分優しげな顔つきになったものの、まだまだコワモテとして通用する個性派。ウジャウジャと画面奥までいっぱいに蠢く何万というバグを前に覚悟を決める表情が実に素敵だ。
 犠牲者の脳天に穿たれた穴に指を突っ込んで「脳を吸い取られてる・・・」と呟く場面に、かつて彼の出世作『スキャナーズ』で聞かせてくれた名ゼリフ「お前の脳を吸い尽くしてやる!」を思い出し、すかさず「お前がやったんちゃうんかいっ」とツッコミを入れそうに。



1998(?). Pakistani. 30x39inch. Folded.

■なんとパキスタン版がベスト・ポスターだ!

 劇場公開から7年も経って見つけたポスター。見た瞬間思わずのけぞった。
 無数の戦闘バグの大群、地中から這い上がるタンカー・バグ、ホッパー・バグは空を翔け、TACファイターが急襲、ジョニー・リコはモリタ・ライフルを勇敢に構え、バグの爪に貫かれたカルメンは苦悶の表情を浮かべる。
 『スターシップ・トゥルーパーズ』という作品に登場する魅力的な要素の数々を、1枚の紙の上にこれほどまでに展開してみせたポスターは他に無いと断言出来る。かつて日本版ポスターのお家芸であった「大胆かつ強引なコラージュ」により各々の尺は無視され、どの国のヴァージョンにも無いダイナミックな構図によって、これが昆虫軍団と人類の戦争を描く映画であることを何のヒネリも無く描写。
 シンボリックかつスマートにキメてみせたUS版などよりも、このようにえげつなく雑多で妙な勢いとスケール感でやっつけてるこの図案にこそ、作品のスピリットが宿っている気がしてならない。デジタルによるコラージュにしては大変お粗末ではあるが、それでもこのデザインがベストと言わざるを得ない。最高である。
 この素晴らしいポスターは、なんと驚く無かれ、パキスタン版である。パキスタンの映画市場がどんな状況を呈しているのかは全く知らないが、この問題作がイスラム圏の国でどう迎え入れられたのか興味津々だ。もしかして、ここで描かれた戦争というものの本質は宗教や人種を超えて万人に受け入れられるものなのかも知れない。マイケル・ムーア監督作品『華氏911』と2本立てで上映してみてはいかがか。

 小生個人としては、『スターシップ・トゥルーパーズ』を『ブレードランナー』『デューン砂の惑星』と並ぶ「名作SFに泥を塗った(もちろん褒め言葉)3大映画」に制定したい。原作を読む力が3人の監督たちにあったのかなかったのか、その「転びまくった(これも褒め言葉)」映像化が持つベクトルの大胆不敵ぶりは誰にも真似出来ないであろう。